装甲騎兵ボトムズは、高橋良輔
監督によって、1983年に作られたロボットアニメです。
当時は、ガンダムブームの余韻もあり、ロボットアニメはもっと高い年齢層をターゲットにした作品を作れるのではないか?と考えられていました。
高橋良輔監督は、「太陽の牙 ダグラム」で社会をテーマにした作品を作ったのですが、その後番組として、個人に焦点をあてた「装甲騎兵ボトムズ」を構想します。
ちなみに、タイトルの「ボトムズ」とはどういう意味かというと、もともとは社会の底辺の人々が乗っているロボットという主旨で、つづりも普通の英語のBOTTOMSからイメージした(と思われる)BOTOMSでした。
発音も「ボトムス」と呼ばせるつもりで、当然ロボットも「ボトムス」と呼ぶはずだったのがいろいろ経緯があり・・
まあ、結論としては、あまり気にする必要はないでしょう。
気になる方はこちらの資料集「VOTOMS(ボトムズ)の由来」へ
ついでに「装甲騎兵」の方は、これはようするにボトムズにおけるロボットのことで、英語だとArmored Trooperとなります。これは、劇中では「AT」という略語として生き残っております。
さて、作品そのものは、主人公キリコ・キュービーを軸に展開します。
この、主人公を軸に話が展開するというのは、当たり前といえば当たり前ですが、実は、ロボット物ではあまり見られません。
なぜなら、ロボットを開発・整備するには、研究者も整備者も莫大な費用も必要なので、通常は戦争やら軍隊やら研究所やらを軸に話が展開するからです。
ボトムズ独特の主人公視点という点は、ボトムズの他の特徴的な世界観ともいろいろ結びついていてます。
例えばATの大きさはわずか4メートルほどで、現代で言うところの、いわばジープに近いイメージです。大量生産の消耗品であり、研究者や整備者でなくても、簡単に整備できます。つまり、主人公が組織に頼ることなくATを動かしたり、手に入れたり、整備したりすることが可能なのです。
このような設定からくる描写は、他のロボットアニメに比べるととてもリアルに感じられ、20年たった今でもフィギアに根強い人気がある理由の一因でもあります。
さて、主人公のキリコというキャラは、この作品の最大の特徴です。
TVを最初に見たときは、正直驚きました。アニメキャラ的な可愛さは全くないし、ほとんど笑うこともない。喋ることも最小限。何考えているのかわからない。
ヘルメットをつけると、他のキャラと同じで見分けがつかない・・
しかし、見ていくうちに、ロボットより世界観より、彼こそがこの作品の最大の魅力だと思うようになりました。
キリコのキャラについては、放映開始時に高橋監督が述べたこちらを参照ください。
(参考)ボトムズは戦争で傷付いた人間の社会復帰のドラマ?
しかし、彼の設定も、結構変遷があるとも思います。
もともと主人公のキリコのキャラの暗さには、戦争で傷ついた男の社会への復帰というテーマがありました。
これは、当時大人気だった、「ランボー」などの、ベトナム帰りの兵士のドラマなどの影響を受けていたと思います。
このテーマは、先にも述べましたように、主人公でもヘルメットをつけると見分けが付かなくなる顔に表されています。
兵隊というのものは、もはや個人ではなく、画一的な道具にすぎないという・・
当初は、戦争に傷ついた人間が、いかにして、戦争を拒否していくかというコンセプトでした。
おそらく最後には、パーフェクト・ソルジャーという戦争に特化した改造人間になるかならないかという選択の中で、それを拒否するというストーリーのイメージが描かれていたのでしょう。
(参考)「キリコも戦いの中で、自分も素体になることを考えるようになりますが、その時点での彼の生き方に結論があるでしょう。」(デュアルマガジン4号 高橋監督の放映前インタビューより)
しかし、放映中にストーリーが築かれていく中で、キリコは生まれながらのパーフェクト・ソルジャーという真実が明らかになります(そういう設定に変更になります)。(戦争に傷ついた人間の社会復帰、戦争の拒否というテーマは継続)
さらに、後にはOVAを展開していくなかで、キリコは遺伝確率250億分の1の異能生存体であり、ほぼ不死という真実が明らかになります(そういう設定に変更になります)。
正直、高橋良輔監督も、脚本の吉川惣司氏も、厳密にラストを考えて作るタイプではなく、物語を作りながら考えていくタイプなので・・結構後付け設定は多いです。
でも、そのやり方こそが、ボトムズの魅力の一因だとも思いますので、あまりこだわらないようにしましょう。
(参考:脚本の吉川氏のコメント)良ちゃん(高橋監督)はほんとに「どうすんのこれ?」っていうぐらい次のこと考えないですからね(ボトムズ・アライブより抜粋)
この点についての高橋監督の見解はこちら:ボトムズの作り方
さて、放映中から大人気、とはいかなかったボトムズですが(テレビゲームも発売されませんでした・・)、根強い人気はあり、放映終了後しばらくしてからOVAが登場しはじめます。
TV版は続編が作れないような終わり方をしていたため、当初のOVAは、TVのストーリーの前史や合間を埋めるものでした。
発売順に並べると・・
「ラスト・レッドショルダー」1985年・・TV版のウド編とクメン編の間にはいるもの。
「ビッグ・バトル」1986年・・TV版の最終回におけるラスト直前に入るもの。
「野望のルーツ」1988年・・TV版の前史にあたるもの。
そして、とうとう、TV版の続編が登場します。
「赫奕たる異端」1994年
(参考)このへんの経緯については、高橋監督の以下のコメントが事情をよく表しています。(ボトムズ・アライブより抜粋)
「後でビデオシリーズで新作をとなった時に、僕は最初、(TV版)52本の物語の間をつなぐような内容で作るべきだと主張していました。それ以外に『ボトムズ』の物語はないんだと。
そのまま、テレビシリーズの流れの中でビデオ版のエピソードを作り続けたら、『ボトムズ』というのはその一点だけでもすごい作品になれたと思うんですよ。だから、そこで意地を張ればよかったんだけど、ビデオ版を欲するファンの人やプロデューサーや、あるいは営業サイドから「もっと先が見たい、先が見たい」と言われて、つい「そうか、あの最終回の先か・・・」と言って作ってしまった。
そこで日和った僕がいけないんです。何としてもテレビシリーズの隙間を探して、そこで新しい話
を作るべきで、それが僕の本当の責務だったんじゃないかという反省はいまでもあります。」
全く見たこと無い人は、TV版からの発売順に見ることをお薦めします。
物語上の時系列に合わせて見ると、設定変更の落差が激しいのではないでしょうか・・
いや、自分は物語上の時系列で見る!という方は、以下の順序でどうぞ・・(野望のルーツ→テレビ版ウド編→ラスト・レッドショルダー→テレビ版クメン編~最終回のラスト直前→ビッグ・バトル→テレビ版最終回のラスト→確約たる異端)
正直言って、これらのOVAは、嬉しい反面、設定がどんどん変化していったことが、個人的には残念でした。
この点については、私のボトムズ論を参照ください。
その点への非難(というほどでもないが・・)をまとめたのが、私のボトムズ論です。
さて、いわゆる主人公キリコの物語のほかに、ボトムズの世界観だけ使った作品というのもいろいろ登場します。OVAでは、「機甲猟兵メロウリンク」があります。
しかし、何と言ってもバトリングをメインにした小説「青の騎士ベルゼルガ」が有名です。
ボトムズ=バトリングというイメージが定着したのは、この作品の影響です。
また、「青の騎士ベルゼルガ」は、プレイステーションでの ボトムズゲーム第一号にもなりました。
ちなみに、家庭用テレビゲームの世界では、スーパーファミコンではひとつしかでなかったボトムズゲームですが、プレイステーションでは4つ発売され、ボトムズ人気の根強さをうかがわせました。
(以下、私が紹介文作成済みのものはリンクはっています。そのうち全部作る予定)
スーパーファミコン
・バトリングロード・・1993年
プレイステーション
・青の騎士ベルゼルガ・・1997年
・ウド・クメン編・・1998年
・ライトニングスラッシュ・・1999年
・鋼鉄の軍勢・・1999年
製作年を見てもらえるとわかるように、OVAが作られなくなってからも、ゲームやフィギアの世界では生き延びていたのです。(もっとも、ゲームはPS2では出ていない・・)
さらに、2004年には、等身大ボトムズ(ブルーティッシュドッグ)も話題になりました。
こうした、20年以上に渡るボトムズの支持を受け、2005年、ついに、ボトムズの再開が決定します。
日経キャラクターズ誌上にて、まずはボトムズの製作小説みたいなものが書かれ始め、2006年1月号には、とうとう、小説版の第1話が書かれます。
今後、どのようなかたちでボトムズが展開されていくのかははっきりわからないところもありますが、暖かく見守っていきたいと思います。