装甲騎兵ボトムズ ウド・クメン編について

装甲騎兵ボトムズ ウド・クメン編についての熱い思い


ウド・クメン編の魅力について

装甲騎兵ボトムズの数あるゲームの中でも、私にとって、最も衝撃的だったのはこのゲームである。
はっきり言って、このゲームのデザイナーは天才である!と、言いたいところであるが、いろいろな問題も兼ね備えているため、あえて、 「このゲームのデザイナーは奇才である!」と尊敬の気持ちとともに言わせていただく。

ボトムズのゲームといえば、通常、バトリングが思い浮かぶ。
とくに「青の騎士のベルゼルガ」を読んだことがある人なら、ボトムズゲームに求める世界はバトリングをベースとしたストーリーだろう 。

実際、ボトムズのゲームは、長らく小説「青の騎士ベルゼルガ」のゲームであったのだ。
デュアルマガジン12号に掲載されていた初のパソコンゲーム(非売品)といい、初のコンシューマ用ゲームである「バトリングロード」 の展開といい、プレイステーション初のソフトが「青の騎士ベルゼルガ」であったことといい、ボトムズゲームとは事実上バトリングのゲームであり、その世界観は「青の騎士ベルゼルガ」のものであった。

そんなボトムズゲーム界にあって、このゲームは初めて「装甲騎兵ボトムズ」の世界を表現しようとした。
ウドの街、クメンのジャングルを舞台としたキリコとフィアナ、イプシロン達の愛憎あふれる戦いを・・

アニメキャラクターの世界を再現しようとしたゲームは多いので、それ自体は珍しいことでもない。
このゲームの特徴的なところは、ゲーム性よりも「装甲騎兵ボトムズの世界はこういうものではないか?」と訴えかけているように感じられる点にある。

別な言い方をすると、「真のATとは何なのか?」を訴えかけているゲームでもある。


1.ウド・クメン編の魅力について


ウド・クメン編は2つの点で主張を持っている。
ひとつはATがバトリングマシンではない点。
もうひとつはプレイヤーが熟達することで キリコの動きすら正確に再現できる点である。

この2点によって、他のボトムズゲームにはない、真の「装甲騎兵ボトムズ」の世界が表現されている。

特徴1 ATは本来バトリングの道具ではなく戦争の道具である。

これは、誰もが忘れていた点であった。上述したように、それまでのボトムズゲームといえば、基本的にバトリングのゲームであったのだ

それが、この「ウド・クメン編」では、戦争の道具としてのATを印象づけられる。
その最たる表現は、歩いたり、走ったりする歩兵の登場である。

もともと、ATはたかだか4メートルほどであり、歩兵の存在は脅威である。それが、このゲームでは、見事に実感できるつくりとなっている。

こちらが歩兵を倒すには、小さな標的に狙いをつけるという面倒な作業をして撃つか(基本的に手動で操作する。高さの調整も面倒)、もしくは踏み潰すかである。(逃げ惑う歩兵をひいたり踏み潰したりするのは、ゲームとはいえ、ちょっと嫌な感じがする・・)

実は、このゲームにおいては、慣れるまでは歩兵は結構強敵である。小さいし、ちょこまか動くし、強力な武器も持っているし・・

このゲームで苦労してからTV版ボトムズを見返して欲しい。

フィアナの乗ったブルーティッシュドッグが、7連装ガトリングガンを使うことで、砲兵を瞬く間に全滅させるシーンがある。

ゲームをやる前は「歩兵=ザコ」のイメージがあったために記憶に残らないシーンであるが、ゲームをやった人間にとっては、その鮮やかな手並みは感動ものである。これこそ、ブルーティッシュドッグの真の凄さだったのだ!

このことを印象づけるのは、ブルーティッシュドッグがバトリングに特化した敵の装甲を打ち破れずに苦労する点である。

なぜ、最新のATであるブルーティッシュドッグにPSのフィアナが乗っているにも関わらず、バトリングに特化したザコ(?)に苦労しなくてはいけないのか?

これは、先ほどの歩兵を一瞬に全滅したシーンと重ねることで始めて理解可能となる。

つまり、ブルーティッシュドッグの設計思想は、バトリングを対象としたものではなく、あくまでも戦場における実践を想定しているので ある。(もしくは、PSの性能測定のために、多様な状況を想定したと言うべきか)
だからこそ、腕に7連装ガトリングガンをつけ、歩兵達を一瞬で倒せるように作られているのだ。

AT同士の戦闘しか考慮していない、街のヤクザなバトリング乗りの下品なマシンなど想定外なのであった。

(注:ゲームはウド・クメン編におけるキリコ視点なので、ブルーティッシュドッグは使えません。残念)





特徴2 プレイヤーの実力が反映されるゲームであるということ

通常、ロボットゲームに限らず、アクション・シューティングゲームにおいては、プレイアビリティが優先される。

つまり、最初の敵は弱く、後にいくに従って強くすることによって、ゲームとしてのとっかかりをよくしているのである。

そのため、最初の面は誰でも簡単にクリアできるが、ラストに行くに従ってなかなか勝てなくなる。

このゲームは違う。

1面から結構むずかしい。最初の敵が最初の難関である。
しかし、元レッドショルダーのキリコであれば、たいした敵ではないだろうと感じさせられる。

具体的に言うと、このゲームでは、敵の難易度が、ある意味では一定なのである。通常のように1面が簡単で最終面が難易度が高いという
ことはない。

全ては、プレイヤーが持っているスキルにかかっているのだ。

もちろん、初めてプレイした者にそのようなスキルがあるはずもない。
ATの操作に熟練するのには、様々なテクニックと経験が必要である。

しかし、面をクリアするごとに、様々な技術が、ゲーム上ではなくプレイヤー自身に身につくようになっており(身につけていかないとクリアできないというべきか)、ウドでのキリコの神業のような動き(敵ヘリの撃ってきたミサイルに対し、バックでローラーダッシュをかけて避けながら、狙いを定めてヘリを打ち落とす)といったような動きもそっくり再現できるようになるし、最初は泣かされた歩兵に対しても、ローラーダッシュで横滑りしながら余裕で狙い打つことも可能になる。

ひととおりのスキルが習得しきるのが7面くらいであろうか。

私は8面は、それまで学習したスキルをもとに、初プレイでクリアした。

そして、もう、どんな難関でも突破できるという自信を持った途端に、残念ながら9面以降、舞台はクメンのジャングルへと移ったのであった。



2.ウド・クメン編のゲーム内容と特徴について

さて、順序が逆になってしまったが、ここではウド・クメン編のゲームについて基本的な説明を行いたい。

「装甲騎兵ボトムズ ウド・クメン編」はプレイステーション用ソフトである。

まず、オープニングはテレビと同じであり、全てポリゴンになっている。
もちろん、キリコやフィアナもである。(ゲーム中にはゴウト・バニラ等のおなじみのメンバーもポリゴンで登場する)

そして、ゲームは、ほぼテレビの進行どおりに進む。
1面 バトリング (TV4話より)
2面 終戦 (TV1話より)
3面 襲撃 (TV6、7話より)
4面 取引 (TV5、8話より)
5面 レッド・ショルダー (TV9、10話より)
6面 逆襲 (TV11話より)
7面 絆  (TV12話より)
8面 脱出 (TV13話より)
9面 アッセンブルEX−10 (TV14話より)
10面 疑惑 (TV15話より)

ゲーム自体はプレイステーションでは一般的なロボット3Dアクションスタイルである。
武器は基本的にはマシンガンとアームパンチである。

だが、他のゲーム(例えばガンダムのアクションゲーム)とは異なる点がいくつかある。

@ポリマーリンゲル液とマッスルシリンダーの存在
なんと、ATを動かすのに必須であるポリマーリンゲル液やマッスルシリンダーの設定が組み込まれている。
これは、意欲的な設定であり、ファンにとっても面白い設定なのだが、ゲームバランス上の大問題を引き起こしている(これについては後述)

Aミッションディスクの存在
TVシリーズで印象深かったミッションディスクの設定も組み込まれている。しかし、単なる武器の追加というレベルの役割であり、かつ、ゲームバランス上の問題を抱えている。具体的に言うと、ほとんどのステージで、役に立つ武器がないのである。私は、ダブルアームパンチしか使わなかった。

どんなものがあるか、参考までに書いておく。

名称 使えるようになる面(ミッション)
キック 1
ループターン 2
オールラウンド・バースト 3
ウェポン・セレクター 5(のみ)
ダブル・アームパンチ 6
オールレンジバースト 8
オートトラッキング 9

このなかでも、5面でのみ使用可能なウェポンセレクターは圧巻である。
レッドショルダー仕様のため、通常の武器に比べて以下の武器が使える。

・9連装ミサイルポッド
・ソリッドシューター
・4連バルカン
・2連ミサイルポッド


Bその他の特徴
残念ながら、対戦機能はないし、マシンも選択できない。




3.ゲームの欠点

さて、このゲームはいろいろと大きな問題を抱えている。

最大の問題は、さきほど説明したポリマーリンゲル液である。

ポリマーリンゲル液とは人間の血液のようなものなのだが、2種類存在し、通常行動を行うPPRと、急制御のためのSPRである。どちらを多く使えるようにするかは自分で設定できるが、いずれにせよ使用時にはどんどん劣化していき、ついには動きがとれなくなる。
休んでいればまた回復するため、このゲームではバランスを考えながら使うことになる。

イメージとしては、歩いている時はPPRを使用し、走るときはSPRを使うのである。

しかし、実際の戦闘では、歩いていてはあっという間にやられてしまう。そのためにローラーダッシュをかけたりするのだが、あっという間にSPRは劣化し、わずか数秒で動けなくなる。

こんなはずでは?と思いマニュアルでも読もうものなら、そこには、役にたたない設定例がいくつも載っている。どの設定を使っても駄目である。

実は、結論はただひとつ、ほとんどのケースにおいて、重要なのはSPRを最大にすることなのだ。

つまり、このゲームにおいては、マニュアルを信じてPPRとSPRの設定を考える必要はない。

むしろ、マニュアルがプレイヤーを混乱させ、ゲームを困難なものにしている一因と言っていいだろう。

SPRを最大にし(PPR:SPR=1:9)、脚部MC活性を最低にしてこそ(ついでに腕部MCも低くする)、自由に動き回ることが初めて可能になる。

なぜ、このように極端な設定変更をしないと遊べないゲームになってしまったのだろうか?

完全に推測だが、ゲームバランスの調整末期に、大きな仕様変更があったのではないだろうか?

おそらく、最初のゲーム設定では、オートロック機能(このゲームの言い方ではオートトラッキング)が初めから使用できたのではないだろうか?なぜなら、PPRが劣化するのは、オートロックを使用した時ぐらいだからである。

ゲーム開発当初の設定では、プレイヤーは自分の好みによって以下の2つを選べるよう、想定していたのではないだろうか?

@PPRを主体とし、脚部MCや腕部MCを強化して、遠方から敵をオートロックで狙撃する。(初心者向け)
ASPRを主体とし、脚部MCや腕部MCを弱くし、高速移動をメインに戦う。(上級者向け)



それが、既にマニュアルも書き終えたタイミングになってから、何らかの理由(このままでは簡単すぎると考えたのか?)により、オートロック機能が外された。

しかし、充分にゲームバランスやマニュアルを再調整する時間もなく、結果的に、マニュアルどおりやるととても遊べない、初心者お断りのゲームが完成してしまったのではないだろうか?

真相は不明だが、このような勘ぐりたくなるようなゲームバランスとマニュアルの問題を抱えたゲームであることは確かである。

(注)なお、ゲームクリアした後にはそのまま電源を切らないことも大切である。クリア後にセーブすることによって、どの面からでも遊べるようになるし、オートロックでの射撃も可能となる。



4.最後に

欠点も多いが、私にとっては、本当に魅力的なゲームである。
クメン編が中途半端に終わってしまったことも、続編が出なかったことも残念でならない。

しかし、何と言っても欲しかったのが、ウド編において、ランダムにマップを造形する機能である。

最初にも書いたが、私は、ATの動かし方をかなりマスターしたのだ。
しかし、その腕を試す場はない。

ここは是非、ゲームクリアしたユーザー向けに、ウド編をベースに、ランダムに敵の数や位置が変わるモードをつけて欲しかった。

そのさい、マップが見えて敵の位置があらかじめわかってしまう機能は不要である。

TV版のキリコのように、ミサイルが近くを横切るのを見て、敵の位置を予測しながら回避行動をとりつつ攻撃を行うというアクションをとりたいのだ。それが可能なゲームシステムなのだから。

それに加えてレンズの切り替えもシステム化して欲しい。このゲームでは、遠方の敵を狙い撃ちするシーンも多く、ズームで確認したいところである。


さらに、マシンを選択できたら・・とか、対戦できたら・・とか、レッドショルダーによる初心者(?)訓練モードがあったら、とかクメン編以降も見たいとか、思いはつきない。

可能性は低いと思うが、ボトムズ再開にあわせ、PS2(3?)で是非、再作成して欲しいゲームである。


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