6章.リツコ発言の検証

 

23話リツコ「人は神様を拾ったので喜んで手にいれようとした。だからバチが当たった。それが15年前。せっかく拾った神様も消えてしまったわ。でも今度は、神様を自分たちで復活させようとしたの。それがアダム。そしてアダムから神様に似せて人間を造った。それがエヴァ。」

 

この、多くの議論を引き起こしたセリフの解読を行いますが、まず、前提としておきたいのは、すでに、E計画およびアダム計画の概略は、今までの結論1〜4のように判明しているのです。 これらの結論は、ゲンドウ、冬月、キールらのセリフに基づくものであり、間違いないものです。

別な言い方をすると、リツコの発言を一切無視したとしても、事実の再構成はすでに出来ているのです。

 

「人は神様を拾ったので喜んで手にいれようとした。だからバチが当たった。それが15年前。せっかく拾った神様も消えてしまったわ。」

 

この言葉は、間違いなくセカンドインパクトを示しています。興味深い表現としては、光の巨人=アダムを、「神様」と言っていることです。

このような言い方は、

21話ナオコ「アダムより人の造りしもの、エヴァです。」

ゲンドウ「我々のアダム再生計画、通称E計画のひな型たる、エヴァ零号機だよ。」

   冬月「神の、プロトタイプか。」

というように、前例があります。ただし、この場合にも、結局「神」とは「アダム」のことをさしています。

つまり、この部分については、変わった表現はとっているものの、要するにセカンドインパクトのことを言っているだけです。

 

「でも今度は、神様を自分たちで復活させようとしたの。それがアダム。」

神様(アダム)を人間が自分たちで復活させようとした計画というのは、結論3でも見たように2004年以降進められたアダム計画のことをさします。

 

「そしてアダムから神様に似せて人間を造った。それがエヴァ。」

これは、もちろん、E 計画のことです。ただし、結論4でもありましたように、E計画は、アダム計画開始前においては、リリスを使用しておりました。 リツコのここでの発言は、アダムの復活〜エヴァの作成という順を追っていることから、2004より本格稼働したE計画、つまり、アダムをベースとしたE計画について述べていることがわかります(もちろんリツコのE計画勤務が2008年であり、また、この発言時期が2015年であるためです)。

 

 

結局、リツコの発言をまとめますと、 セカンドインパクト(2000年)〜アダム計画(2004年)〜エヴァ計画(本格稼働は2004年以降) というように、ゲンドウ、冬月、キールらの発言から導かれる結論1〜3と同じ内容を、時系列に沿ってコンパクトにまとめて語っていたのです。彼女は複雑な推移を経た3プロジェクトを、ミサトやシンジ向けに軽く一言で説明したために、逆にわかりずらく聞こえることとなったのです。

 

結論5

リツコの発言の要点は、

神様の消滅→自分たちで復活させたアダム→エヴァの作成

という事である。

これは、

セカンドインパクト→アダム計画→エヴァ計画

にそれぞれ対応している。

なお、正確に言うとエヴァンゲリオンの対象機種は弐号機以降のアダムベースのものである(リツコはその事に気づいていない可能性がある)。

 

 

 

(参考)地下の巨人の認識

リツコ発言の事情をさらに詳細に考えてみると

21話ナオコ「あの巨人は我々の組織ゲヒルンではアダムと呼んでいますが」

      「アダムより人の造りしもの、エヴァです。」

23話リツコ「人は神様を拾ったので喜んで手にいれようとした。だからバチがあたった。それが15年前。せっかく拾った神様も消えてしまった。でも今度は神様を自分たちで復活させようとしたの。それがアダム。そしてアダムから神様に似せて人間を造った。それがエヴァ。」

 

この、2003年におけるナオコのセリフと、2015年におけるリツコのセリフには大きな食い違いがあります。

 

ナオコ・・光の巨人=アダムであり、そこから造ったのがエヴァ。

リツコ・・光の巨人が消えてしまい、人が復活させたのがアダム。そこから造ったのがエヴァ。

 

この矛盾はどのように考えるべきでしょうか。 ナオコの発言時点(2003年)では(正確には2004年まで。別な言い方をすれば初号機まで)アダム計画は始まっていないため、アダムよりエヴァは作成できませんでした。

それにもかかわらずナオコが、「アダム」と言っているのは、キールも言っているように、地下の巨人リリスの事です。

つまり、ナオコの認識においては、 光の巨人=アダム=地下の巨人であり、この地下の巨人からエヴァを作成したわけです。

 

ちなみに加持は、

15話加持「セカンドインパクトからその全ての要であり、始まりでもある。アダムだ。」

と、地下の巨人を見て言います。

 

ここで、加持が地下の巨人を見て言っている中で、

・アダムと言っている(リリスの存在は理解していない)。

・セカンドインパクトと結びつけている。

という、2点が重要です。

 

つまり、ナオコと加持はほぼ同じ認識をしているわけです。セカンドインパクトで破壊された巨人が運び込まれたのが地下の巨人であるということです。

このことから、ゲンドウが、関係者に対して地下の巨人=セカンドインパクトで爆発したアダムの残骸であると説明していたことが想像できます(また、この説明をナオコはそのまま受け入れたと考えられることから、彼女のジオフロント勤務は2000年以降であったと推定されます)。

 

零号機と初号機は、地下の巨人(リリス)から採取された細胞から培養された2体のクローン(Sample-L01とSample-L02。なお、この表記は想像のもの)をベースに作成されました。

この当時はまだアダム計画が始まっていないからです。

 

しかし、ナオコは地下の巨人を光の巨人アダムの残骸と考えていたため、

21話ナオコ「あの巨人(光の巨人)は我々の組織ゲヒルンではアダムと呼んでいますが」

      「アダムより人の造りしもの、エヴァです。」

という発言になったのです。

 

つまり、光の巨人アダムの残骸が運び込まれたのが地下の巨人であり、そこから採取したDNAから作ったのがエヴァであるというのが、ナオコの認識です。

 

 

一方、本物のアダムの細胞(DNA)は2000年に葛城調査隊により採取されており、2004年のアダム計画によりクローン量産および成長促進が図られました。ここから作成されたクローンが、Sample-A01以降のサンプルです。

もちろん、アダム計画の事は、赤木親子は当然知っていますし、アダムのサンプルを輸送した加持も知っていたでしょう。

 

しかしながら、Sample-A01以降のベースとなったDNAを採取したのが、「地下の巨人とは別物の存在である、南極の光の巨人であった」ことを知っているものは誰もいないのです。

 

つまり、赤木親子も加持も、アダム計画のSample-Aシリーズの存在は当然しっていますし、もしかすると、それが南極で採取されたDNAに基づいていることも知っていたかもしれません。

 

しかし、彼らは南極の「光の巨人=地下の巨人」であると考えていたため、サンプルのベースが全く異なる2種類が存在することは知らなかったのです。

 

そのため、

・ナオコは、エヴァ零号機が地下の巨人から作成されたものであることを知っているにも関わらず、光の巨人をアダムと呼び、エヴァをそこから作成したと言いました。

・加持は、ベークライトアダムを見ているにも関わらず、地下の巨人を見て、「セカンドインパクトからその全ての要であり、始まりでもある。アダムだ。」と光の巨人と結びつけました。

これは、光の巨人アダムの残骸が運び込まれたのが地下の巨人であり、そこから採取したDNAから作ったのがベークライトアダムであるという加持の認識によるものです。

 

一方、リツコの発言は、前にもいいましたように、セカンドインパクト〜アダム計画〜E計画のことを意味しています。 つまり、

真相は

<アダム計画以前>

リリス(アダムの残骸とナオコは考えていた)→DNA採取によりリリスのクローン・サンプル作成→エヴァ零号機および初号機を作成

<アダム計画以降>

光の巨人アダムの細胞(2000年南極にて採取)→アダム計画(アダムのクローン・サンプル作成。2004年)→エヴァ弐号機以降作成

 

というように、2004年のアダム計画を間に挟んで行われた2種類のエヴァ製造過程にが存在するわけですが、赤木親子や加持にとってはこの二つは同じ製造過程としか考えようがないのです(地下の巨人=光の巨人と考えているため)。

 

さて、ナオコとリツコの発言内容の違いですが、

ナオコ・・光の巨人=アダムであり、そこから造ったのがエヴァ。

リツコ・・光の巨人が消えてしまい、人が復活させたのがアダム。そこから造ったのがエヴァ。

 

これは、

ナオコ発言(2003年)・・エヴァ零号機(初号機)の製造過程を語っている。ただし、地下の巨人をアダムと考えている。また、特に触れていないが、地下の巨人からエヴァを2体作るさいに、ベースとなるクローン・サンプルを2体作ったと思われる。

 

2004年・・アダム計画始まる。

 

リツコ発言(2015年)・・エヴァ弐号機以降の製造過程を語っている。エヴァのベースとなるクローン・サンプル(アダム計画の成果)にも触れている。アダム計画以前のエヴァ(零号機、初号機)には触れていないのは、どのエヴァも同じと考えていたせいか(つまり、リリスの存在を認識せず、地下の巨人は光の巨人の残骸であると、母同様に考えていたため)。

 

両発言が矛盾しているわけではありませんし、それぞれ別の件を指しているわけです。ただし、この両発言に含まれる違いを、彼女達は意識していなかったと思われます。リリスの存在を知らず、地下の巨人を光の巨人の残骸と考えてしまえば、リリスから作ったクローン・サンプルも、アダム計画により作られたクローン・サンプルも、どちらも同じことですから。

 

 

 

 

 

7章.リリスはどこにいたのか

 

セカンドインパクト後に南極に塩の柱が立っていること。そして同じ塩の柱がターミナルドグマにも立っていることを考えると、かつて、ターミナルドグマでもセカンドインパクト同様の現象が起きたこと(ファーストインパクトか?)が想定されます。

そのときの主役はアダムではなくリリスだと考えられ(リリスの卵)、リリスの足がないのはそれによる可能性があります。

 

また、ガフの部屋も、リリスの卵とそうでないもの(アダムの卵?)の二つ存在すると考えられます(二つのガフの部屋参照)。

 

これらを考慮すると、リリスは初めからターミナルドグマに磔になっていたこと、(リリスをアダムと考えていたことから)ナオコがジオフロントに勤務したのはセカンドインパクト以降であることなどが推定されます。

 

なお、天使により捕らえられるリリスというイメージはユダヤ伝承に存在すること、塩の柱は旧約聖書創世記に存在することなどを考え合わせますと(さらに、脚本版や企画書で語られる第一先住民族、始祖民族なども合わせて考えるのも一興ですが)、ファーストインパクトおよびリリスの磔についてもうっすらと想像できます(詳細はファーストインパクト参照(現在作成中))。

 

結論6 赤木親子や加持は、地下の巨人が基本的には光の巨人の残骸と考えていた。 しかし、地下の巨人(リリス)は、セカンドインパクト以前からターミナルドグマに存在していた可能性が高い。


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