マイケル・ジャクソン「THIS IS IT」の感想・解説と真の姿の考察
(参考)DVD−BOXはいきなり売り切れです。Blu-Rayが視聴可能なら、左から3番目あるいは4番目がお勧めです。映像的には一番いろいろ入っています。右の2枚はCDです。デラックス版(2枚組)は、Beat ITのデモが超面白いのでお勧めです。
「THIS IS IT」は、マイケルの間違いなく最高のライブであったはずの、THIS IS ITツアーの全体像をよく示してくれる素晴らしい映画である。
本当に素晴らしい。
映画館で、一曲終わるごとに思わず拍手してしまいそうになった。
まだ見ていない人は、DVDの発売を待つなどと言わず、是非映画館で見てほしい。
映画館の大画面と音響効果でないと、コンサートの臨場感が十分には伝わらないだろう。
この作品の存在により、マイケルの晩年への評価も大きく変わるだろう。
これまでのゴシップでは、最近では、ろくに歌うことも踊ることもできないと言われてきた。
しかし、この映画を見れば、誰でもマイケルの凄さに脱帽するだろう。
ダンスといい、演出といい、彼の人間味といい・・しかも年齢50である。
マイケルの裁判中でもホームページで応援し続けた私としては、この作品を見ることで、彼を見もせずに批判していた人たちが、彼の魅力に気づいてくれることを祈るばかりである。
さて、私は、この作品を映画館で見る時は、感激しっぱなしであったのだが、少し時間をおいた今となっては、いろいろと疑問もある。
いくつもの重要映像が、出し惜しみされているのではいだろうか?
おそらく、今回の限定公開の後は、3D版の公開、あるいは、完全版の公開などもひそかに予定されているのではないかという気がする。
まさか、3D用に撮影したスリラーを、あのまま公開しないということはありえないだろう。
また、今回用に開発されたビリー・ジーンの輝く服も、全く姿を見せなかった。
オープニングムービーだって、もっと完成したバージョンがあるはずである。
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あるいは、もしかしたら、出し惜しみではなく、重要映像が、本当に未撮影だったのかもしれない。
その場合には、本当の演出は、どういうものだったのかという興味が残る。
以下の文章は、その考察である。
*まだ一度しか見ていないので、若干記憶があやふやです。また見直して修正します。
1.オープニング
オープニングは、ジェットコースターのような映像と、巨大ロボットからの登場シーンである。
しかし、映画「THIS IS IT」では、このシーンは、インパクトは強烈だったが、なんだかよく分からなかった。
ここは、おそらく、巨大ロボットを運転するマイケルの映像と、ロボットからカッコよく降りる登場シーンで構成されているはずである。
あんな中途半端なムービーしか作っていないことはないだろうし、タイミング的にも完成しているはずである。
なぜ、そう言い切れるかというと、ヒストリー・ツアーの登場シーンが、未来の乗り物の運転シーンと、そこからステージへの登場だったからである。
2.スタート・サムシング
これは、間違いなくマイケルのスタート・サムシングの中でも最も素晴らしいパフォーマンスだろう。
この曲は、BADツアーなどでもやっていたが、あまり、こった演出などはなかった。
<参考 BADツアーでのパフォーマンス>
3.JAM
これは、軽く流す感じである。
しかし、ライブ・イン・ブカレストなどのDangerousツアーを知っている人なら分かる通り、本来はエネルギッシュなダンスを行うところである。
リハーサルだから、力を抜いていたのか、今回のツアーでは、軽く流す予定だったのか・・?
ちなみに、本気で踊るとこうなる。
(参考:これはロンドンでの公演のものである)
ちなみに、もとのビデオはこうである。
(参考)JAMのビデオ
なお、BADツアーのオープニングをかざったスタート・サムシングと、DangerousツアーのオープニングをかざったJAMと来れば、次は、Historyツアーのオープニングをかざったスクリームだろうかという気もするが、今回は外されていた。
スクリームについては、9月にMTVのVMA2009でジャネットが、夢のライブ共演をなしとげたので、年内にやる再放送で是非見てほしい。
4.They Don't Care About US
これも、ヒストリーツアーでもあった曲だが、今回のライブが最高である。
(参考:前回のライブ)
今回は、何といっても、兵隊のようなダンサー達の無限増殖が面白い。
是非、数百人のダンサーを従えたマイケルのダンスを見てみたかった。
(参考)ビデオはこれである。
なお、囚人バージョンもある。
5.スムーズ・クリミナル
今回の最大の見せ場の一つである。
もとの映像を知らない人はまず映画ムーンウォーカーのこのシーンを見よう。
また、ヒストリーツアーでの映像は以下である。
今回は、映画ムーンウォーカーとも、これまでのライブとも異なる完全新作のシカゴ・ギャング版である。
まさか、あれほどの映像シーンが作られていたとは思わなかった。
弾丸が、観客席に向かうシーンや、マイケルが窓をぶち破って飛び降りるシーンでは、本当は3D映像で観客に迫るはずだったのではないだろうか?
また、流れとしては、マイケルが窓をぶち破って観客席に飛び降り、その後、いつものダンスシーンになるのが、正統な流れなのではないだろうか?
それから、スムーズ・クリミナルの最も代表的なシーンが今回は抜けていたが、本当に無くなっていたのか、未撮影だったのか、出し惜しみなのか、気になるところである。
なお、このような白黒映像とライブとの融合で参考になるのが、マイケルも参加した2000年のMTVのVMAのインシンクのステージである。
ライブの冒頭も、マイケルの登場シーンも白黒であることに注意。
さて、今回最も注目される変化のひとつが、いくつかの古い映画との融合である。
リタ・ヘイワースやハンフリー・ボガードとの共演となっていた。
<リタ・ヘイワースのギルダ>
もともと、スムーズ・クリミナルの映像表現というか、ダンスは、フレッド・アステアへのオマージュ的なものがあった。
<参考:フレッド・アステアのバンドワゴン等の映像とスムーズ・クリミナルの融合>
今回、リタ・ヘイワースやハンフリー・ボガードとの共演も追加されたことで、このスムーズ・クリミナルの一番のポイントは、マイケルの昔の映画への愛情であることがわかった。
以前から、マイケルは、古い映画への愛情を数多く口にしていたが、そのオマージュの具体化が、このスムーズ・クリミナルだったのだろう。
(今回は、入っていないが、バズビー・バークレイ作品のSF版や、昔の恐怖映画への愛情も良く口にしていた。前者が、キャプテンEO、後者がスリラーやゴーストにつながったのだろう。また、THIS IS ITのステージ終了後は、ステージ活動はやめ、恐怖映画などゆっくり作りたがっているという話もあった)。
マイケルは、自分自身でも映画製作の強い情熱を持っていたが、このスムーズ・クリミナルも入っている映画「ムーン・ウォーカー」は、興行的には失敗し、その後映画製作は行っていなかった。今回、THIS IS ITが大ヒットしたことを知ればどれほど嬉しかっただろうか・・
ところで、このスムーズ・クリミナルは、マイケルのゲーム趣味につながっている点も重要である。
この作品をもとに、セガと組んでゲーム「ムーンウォーカー」を制作することになる。
つまり、この「スムーズ・クリミナル」という作品は、マイケルにとって、映画への愛情にも、テレビゲームへの愛情にもつながっている、結節点のような作品になっていることがわかる。
<ゲームにおけるスムーズ・クリミナル>
ついでに、私が10年ほど前に書いた、マイケル論とゲーム「ムーンウォーカー」の解説です。
6.The Way You Make Me Feel
これもまた、今回独特の楽しい演出である。
ちなみに、この曲のライブは数多いが、ここでは、ブリットニー・スピアーズとのデュエットバージョンを是非見て頂きたい。
ビデオはこれである。
7.Shake Your Body
いつものジャクソン5のメドレーであるが、今回はレトロな演出が面白い。
また、興味深い点は、いつもだと泣き崩れるのだが、今回はそうしない点である。
<ヒストリー・ツアーでのメドレー>
リハーサルだからか?
それとも、演出の変更か?
また、最後のシーンでは、若手ダンサー達に飛び回らせているのも、今までには無かったことである。
8.I just Can't Stop Loving You
ちなみに、これはデンジャラス・ツアーのものである。
9.スリラー
これもまた、今回の見せ場の一つである。
映像も新作3D。
空を舞うゴースト。
さらには、ロボットのクモ。
これは是非ともライブで見たかった・・
下は、ヒストリーツアーの時のものである。これはこれで面白かったのだが、
今回のパワーアップぶりとは比較にならない。
(参考)言わずと知れたビデオはこれである。
10.Beat it
昇降機を使った演出はいつものライブと同じである。
ただし、最後は服を燃やすやすようで、これは初演出である。
いつもの演出に慣れた観客もビックリだろう。
これも是非見たかった。
服を燃やすリハーサル映像は、本当に無いのだろうか?
(参考)ビデオはこれである。
なお、昇降機を使った演出は、BADツアーからヒストリーツアーまで、一貫して見られた。
これはBADツアーのものである。
変わった演出としては、30周年コンサートの演出が忘れられない。(下の前半はBlack or White)
11.Black OR White
これは、ギタープレイが見ものである。
上のスラッシュのギタープレイも参照のこと。
マイケルと、ライブにおけるギタリストの関係で言うと、
Black OR Whiteの演奏者で、上の動画のようにいくつかライブでも一緒にやっているスラッシュや、
バッドツアー以降、Dangerousツアー、ヒストリーツアーと、多くのワールドライブを一緒に回った女性ギタリストジェニファー・バトゥンも忘れられない(2つ上の動画)。
しかし、今回のオリアンティは、子供のような風貌でもあり、高い技術とのギャップがインパクトがある。
<参考>
オリアンティの紹介記事
オリアンティのページ
<参考:オリアンティの新作>
さて、私にとってのBLACK or whiteは、何といってもパンサー版である(一番良いのは、オリジナル版に収録されているもの)。 ヒストリー・ツアーでは、この部分のビデオが挿入されていた。
(参考)ビデオの全体はこれである
また、ライブでは、これも好きである。車の上に乗って踊るところが。
12.アースソング
映像も美しく、素晴らしい演出である。
4年間で自然破壊を食い止めようというマイケルの言葉も素晴らしい。
今回のツアーでは、ゴシップネタによれば、本当の動物達(像、ヒョウ、オウムなど)が使われるという噂があったが、このシーンで登場させる予定だったのだろうか?
MICHAEL
JACKSONの、ロンドンで行われる大規模復帰コンサートの動物を使ったステージ・プランを、動物愛護団体が非難
さて、前回のヒストリーツアーでは、戦車をマイケルが止めた。
迫力は前回の方があった。
だが、兵士が泣き崩れるのはわざとらしかったので、今回の方が、素直に応援でき、楽しめる。
(参考:ヒストリーツアーの戦車シーン 動画が見当たらなかったので画像のみ)
(参考)ビデオはこれである
13.ビリー・ジーン
これは、スタッフのメンバーたちが、ファンとしてマイケルのダンスを見て感激してしまうという、感動的な良いシーンである。
しかし、前半で予告されていた、マイケルの光る服が結局未公開である。
本当に映像はないのであろうか?
少なくとも、時期的に考えて服は完成しているはずである。
ちなみに、これは、ビリージーンの光の演出シーンがベースだろう。
いや、こっちが近いかもしれない。
これに加えて、発色させることで、この映像を全身でライブでやろうとしていたはずだ。
下の映画「ムーンウォーカー」の冒頭15秒間のビリージーンの服の足だけのシーンに注目。
これを全身でやったら、この世のものとは思えないえないぐらい美しい光景だったかもしれない。
また、いわゆるいつものようなムーンウォークがなかった点も気になる。
これも、未撮影なのか、本当に無くす予定だったのか、出し惜しみなのか、気にかかるところである。
(参考)ビデオはこれである
14.マン・イン・ザ・ミラー
ビデオはこれである
ラストに出てくる、少女が地球を持つイメージは、以前にもライブではこのように表現されたことがあった。
とにかく、今回は、実現していれば、これまでとは比較にならないような、素晴らしいライブであったことは間違いない。
また、マイケルのリハーサルでの自然な姿を見ることができるこの映画は本当に素晴らしいと思う。
関係者には、素直にお礼を言いたい。
しかし、一度のツアーも行えなかったことは、ファンにとっても本当に残念だが、誰よりもマイケルが残念な思いをしているだろう。
そう考えると、マイケルがこれほど情熱を傾けて制作した、THIS IS ITツアーの全体像を、いろいろと不明確なままにしていいものだろうか?
未公開フィルムをもっと見せるなり、3Dシーンは、ちゃんと3D映像で見せるなり、未完成シーンは、疑似的にでも完成させるなりして、ライブの全体像をはっきり分かるようにしてほしい。
例えば、オープニングムービーだって、完成しているなら全て見せてほしいし、未完成なら、しっかり完成させて欲しい。
それだけ投資するぐらいの収益は、ソニー始め関係者は軽く得ているはずだし、マイケルだってそれを望んでいるはずである。
*制作側もそう思っているようで、トリビュート・イベントを実施すると、ずっと言い続けているが、どうなったのだろう。7月時点では、「最も重視していることは、予定されていた公演の演出を披露すること」と言っていた。映画興行の莫大な利益で満足していなければいいが・・
(参考)AEGライブ、英でのイベントを企画
<参考:これまで発売された唯一のライブ: ライヴ・イン・ブカレスト>
演出は、明らかにThis is itの方が上ですが、最大の違いは、絶叫し、失神する観客たちでしょう・・・
ちなみに、以前書いた、ライヴ・イン・ブカレストのDVDの紹介記事です。