マイケル・ジャクソンのライヴ・イン・ブカレスト

 

ライブ・イン・ブカレストは、マイケル・ジャクソンの唯一の公式に発売されているライブDVDである。
(単体発売および、未発表音源含むアルティメイト・コレクションにも同梱で発売)

当然ながら、最高画質で、マイケル・ジャクソン全盛期のライブが楽しめる。
多少なりともマイケル・ジャクソンに興味がある人なら、間違いなく買うべきである。

ここでは、ライヴ・イン・ブカレストについての個人的な感想や情報をまとめる。

1.なぜ、デンジャラス・ツアーのライブなのか
マイケル・ジャクソンの数多くのライブのうち、DVDで発売された1枚が、なぜライブ・イン・ブカレストだったのだろうか?

別な言い方をすれば、なぜ、ヒストリーツアーではなく、デンジャラス・ツアーのライブを発売したのだろうか?

マイケルのワールドツアーは、概ね以下のような特徴がある。

バッドツアー 世界的な大ブームの中で行われた。マイケルの身体能力は最も高い。色は黒め。 アルバムは「BAD」まで。ただし、演出はあまりない。また、時期的な問題から、スムーズ・クリミナルのダンスすらない。

デンジャラスツアー ダンスとしては最もきれい。マイケルの色は白。おそらく、マイケル自身にとっては、理想形の容姿とダンス、パフォーマンスを実現できていた頃。

ヒストリーツアー マイケルの色は白。 オープニングムービー、宇宙船、戦車など、演出には最も費用をかけている。デンジャラスなど、マイケル・ジャクソンのライブ用定番ダンスが全て入っている。ただし、ライブ中にビデオ放映も多く、マイケルもダンスに専念というより、右に左にと走り回っていた印象もある。

いろいろな要素が盛りだくさんなのはヒストリー・ツアーだが、あえて、デンジャラス・ツアーが発売されたのには、以下のような理由があるような気がする。

1.マイケル・ジャクソンという伝説としてのライブ
デンジャラス・ツアーの、特にこのブカレストでのライブは、失神者、号泣者続出である。
そのため、マイケルのダンスパフォーマンスよりも、観客の絶叫映像を優先させているケースすらある。
マイケルは、自分のダンスを正確に見せたり、レパートリーの広さを見せることよりも、大観衆が失神し、絶叫しているこのライブを、おおくの人に見て欲しかったのだろう。
自分のパフーマンスの記録映像としてではなく、マイケル・ジャクソンという伝説の記録として。

2.ダンス、容姿、パフォーマンスの完成度
容姿としても、ダンスとしても、最も美しいのがこの時期である。
マイケル・ジャクソン自身の美学として、この時期のパフォーマンスが最も納得行くものなのだろう。

3.世紀のスーパースターの記録として
このデンジャラス・ツアーの終盤に、マイケルの少年虐待疑惑が始まる。
それ以降、マイケル・ジャクソンという名前は、ある種の陰りをおびるようになる。
彼が、無敵のスーパースターとして輝いていた最後の時期が、このデンジャラス・ツアーであった。



さて、以下は曲ごとの解説・感想である。(ひとこと言いたい曲のみ)


登場シーン
マイケル・ジャクソンのツアーの中でも、最もインパクトがあった、彫像のように静止しつづけるシーンから始まる。

ただ、立っているだけ、サングラスをはずすだけで、人々が絶叫し、涙を流す。
これこそ、マイケル・ジャクソンの最も伝説的なパフォーマンスのひとつだろう。

後のヒストリー・ツアーでも同じことをやっていたのだが、宇宙服を着て登場したために、大きな会場では、何だか良く分からない点があった。やはり、生身のマイケルがやるところに、インパクトがある。

お金をかけたのはヒストリー・ツアーだが、演出としては、デンジャラス・ツアーの方が成功したと言えるだろう。




JAM
デンジャラス・ツアーの見所のひとつが、JAMだと思う。
ビデオクリップとは全く別物の、ライブ専用の振り付けがされていて、とにかくかっこいい。
しかし、このライブ・イン・ブカレストでは、観客をうつしまくってしまうため、ダンスが断片的にしか味わえない。
だが、その断片的なダンスを見ただけでも、マイケル全盛期の身体のキレのよさがわかるだろう。


スタート・サムシング
ヒューマン・ネイチャー


スムーズ・クリミナル

この曲は、もとはアルバム「BAD」の曲だが、ダンスが作られたのは映画「ムーンウォーカー」であった。
そのため、ダンスがツアーに組み込まれたのは、このデンジャラス・ツアーからである。

言うまでも無く、マイケルのダンスの中でも代表作の一つである。
また、他の曲は、ビデオクリップとライブでは、イメージが随分異なるケースがあるが、これは、映画そのものである。

唯一残念なのが、映画や、ヒストリーツアーのように、女性ダンサーが登場しない点か。


I JUST CAN’T STOP LOVING YOU

SHE’S OUT OF MY LIFE

I WANT YOU BACK/THE LOVE YOUSAVE

I’LL BE THERE

スリラー

BADツアーの時と異なり、ビデオクリップ同様に、骸骨やゾンビと踊ってくれるのが楽しい。
マジックショーも加わり、エンターテイメントに徹している。


ビリージーン
ムーンウォークを有名にした、マイケルの定番ダンスである。
演出そのものはいつもと同じだが、ライヴ・イン・ブカレストでも、完成度はとても高い。

WORKING DAY AND NIGHT

ブラックオアホワイトの後半部分の映像(ビデオ)


ビート・イット

これも定番である。
基本的にはいつもの演出であるが、このライブでのダンスは、とりわけ完成度が高いと思う。

WILL YOU BE THERE

ブラックオアホワイト
煙の演出等はある。
ただし、どこかのライブでやったような、車の上にのっかったりする演出はない。
また、個人的には、ここでこそマジックを使って、黒ヒョウに変身して欲しかった。


ヒールザワールド
新体操のような少女の演技から、転がってきたボール(地球)をマイケルが拾い、ヒールザワールドへ。
巨大な地球儀のまわりを世界中の子ども達と回るというこった演出であった。
これを超える演出としては、スーパーボウルでのハーフタイムでの、観客を巻き込んだヒールザワールドぐらいであろう。


マン・イン・ザ・ミラー
最後は、マン・イン・ザ・ミラーから、宇宙服に着替えて、飛び立っていく。
終わり方としては、各ツアーの中でも、最もかっこいいと思う。


<デンジャラス・ツアーそのものの感想>
私は、デンジャラスというアルバムが、マイケルのアルバムの中でも最も好きであった。
当時、このツアーを、日本公演の12月24日に見に行ったのだが、素晴らしさに感動しつつも、デンジャラスの曲があまり入っていないのが残念であった。

具体的には、以下の曲も入れて欲しいと、当時思ったものである。

1.デンジャラス
・・これは、後にダンス化され、マイケルの定番パフォーマンスとなる。
デンジャラス・ツアーに入っていれば、うれしかったのだが、時期的に仕方ないであろう。
BADツアーと、スムーズ・クリミナルの関係のようなものである。

2.リメンバー・ザ・タイム
これは、本当にやってほしかった!今からでもやって欲しい。
ダンスそのものはビデオですでに完成している。

しかも、デンジャラス・ツアーでも、リハーサル時点では入っていた。

後に、アメリカの番組でパフォーマンスされるが、マイケルの足の具合が悪いため、車イスでのダンスとなった。

準備は万端に整っていたにもかかわらず、結局、まともにライヴで放映されることなく終わってしまった。
私見だが、デンジャラス・ツアーから外れた最大の理由は、ツアーのメンバー構成ではないだろうか。

この曲は、男女等人数のダンサーが必要である。
リハーサルのビデオでは、確かに男女等人数でやっている。

しかし、デンジャラス・ツアーは、ほぼ男のダンサーだけで構成されていた。そのへんが理由で、本番では外されたのではないかと思う。

なお、リメンバー・ザ・タイムのライブについてを参照のこと。

3.イン・ザ・クローゼット

これも、ビデオでダンスが完成しているのだから、やってほしかった。もっとも、ビデオ公開がデンジャラス・ツアー直前だったため、いろいろな都合で間に合わなかったのかもしれない。
また、リメンバー・ザ・タイム同様、女性ダンサーが必要なので、デンジャラス・ツアーからは外されたのかもしれない。

後に、ヒストリーツアーでは、ちょっとだけ歌っていた。
デンジャラス・ツアーで、もっと真面目にやって欲しかったところである。


4.フー・イズ・イット
これは、ビデオからして、ダンスがないので、ライブまで手が回らなかったのであろうか。
歌だけでもよかったのだが・・

5.BAD
これは、前のアルバム「BAD」の代表曲であるが、あれだけ大ヒットしたのだから、デンジャラス・ツアーでもやって欲しいところであった。後のヒストリー・ツアーからも外されている。


<最後に>
以上、当時の思いを書いたが、今から考えれば、マイケルのベスト版構成のようなライブになっており、それはそれでよいと思う。

できれば、他のツアーや、他のライブも発売して欲しいところであるが、ヒストリー・ツアーではこのライヴ・イン・ブカレストほど観客がバタバタ倒れているライブもなかったと思うので、発売されないだろう。

全盛期のマイケル・ジャクソンのライブを知る上では、ベストな一本だと思う。


<追記>
10年後ぐらい前に、マイケル論を以下にまとめた。
マイケル・ジャクソン ムーンウォーカー

それ時期の以降については、下記にまとめた。
マイケルの最後の10年間を襲った5つの不幸(TVの偏向報道を批判する)






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