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庵野監督によるクシャナ戦記製作の拒否
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作者の側からキャラクターに対して少しコメントを。どんなふうに思ったとか、勝手に動き出したとか、あるいは描ききれなかったことなどを。 クシャナが一番、男性にも女性にも人気がありますね。 宮崎監督「ナウシカもクシャナもすごく似ているんですよ。盾の両面です。ただクシャナというのは、やっぱり生い立ちをちょっと描きましたけれど、物理的にも深い傷を負っているのですね。 あの人は非常に公正な王になれる力量を持っていると思います。有能な前線指揮官って僕は、好きだから。 有能な前線指揮官が有能な王様かどうかはわからないけれど。だから王にはしない。代王で良い。代王って代わりの王様という意味ですよ。そういうことにとどまれる人だと思う。描いていて、何度もかわいそうだなと思いました。それが描いていて伝わらないんだよね。困ったですね。母親のことはなんとしても触れなければいけないと思ってたのだけれど、もっとしっかり描くべきだと思いながら、それを触れるゆとりが一頁しかなくてね。でもやっぱり今触れておかなければしようがないだろうということでやってしまいましたけれど。 それほど深く考えてはいないのですけれど。庵野君がクシャナを主人公で一本つくりたいと前からラブコールを送っています。結構面白いのが出来るような気がしますが。 宮崎監督「駄目ですね。つまらないものが出来る。 彼は、戦争ごっこをやりたいだけなんだもの。戦争ごっこは僕は嫌いじゃないけど。僕が三巻目に描いた戦闘場面なんていうのは、非常にうまく出来ていると思うんですよ。ざまー見ろというくらいうまく出来ているという、まあおろかな自慢です。戦争を描くのならこのくらいのことを描けと、そういう見栄も僕にはありますから。 でも「ナウシカ」は、戦争を描くまんがではないから。 でも、(執拗に喰い下がる)その優秀な前線指揮官としてのクシャナの一時間半の活劇というのはなぜ駄目なんですか? 宮崎監督「くだらないですね。最低です。最低になるのに決まっているじゃないですか?そんな企画しか思いつかなかったら、映画をつくることを辞めた方が良いですよ(笑)。優秀な前線指揮官の映画なんか、アメリカの先達がいくらでも作っているじゃないですか。『コンバット』とか。」 それはそれで。 宮崎監督「映画にできる内容なら自分でやります。」 (コミックボックス No.98 1995年1月号より抜粋)
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