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ナウシカ のソース :: アニメの部屋

xpwiki:ナウシカのソース

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宮崎駿監督はもともとマンガ家を目指しいた時期もあり、断念してアニメを選んだという経緯がありました。

しかし、アニメの世界で「[[未来少年コナン]]」や「[[カリオストロの城]]」などの名作を作ったにも関わらず、1982年当時、宮崎監督は仕事を与えられず、ヒマを持て余していました。

そのため、雑誌アニメージュの依頼により、一度は捨てたはずの漫画を描き始めることになります。


宮崎駿監督「映画やアニメーションをやってたらできないようなことをやらなければ、わざわざコミックを描いている意味がないと思ったから、自分がこういうものはアニメーションになるまいって考えた世界をやってたんです。」(「風の帰る場所」より抜粋)

どのような世界を考えたのかは、コミック版第一巻に載せている「[[ナウシカのこと]]」を参照ください。

間もなく会社も辞めたため、失業状態のまま、ナウシカを自宅で描き
続けます。


しかし、連載1年ほどで、アニメ化の話が持ち上がります。

もとは、「アニメグランプリ」というイベントでの5分くらいのパイロット・フィルムのイメージでした。

しかし、宮崎監督の「5分じゃ何も描けませんよ」という言葉で、10分案に変わります。

その後、徳間書店側の都合で30分でのビデオ案を再打診したところ、宮崎監督が「30分というのは中途半端ですね。どうせなら1時間10分、つまりテレビスペシャルくらいの時間があれば、気のきいた小品を作れるんですが・・」

といい、以下の案に替わりました。

当初は、70分のバージョンで、マンガ版の前史にあたるナウシカの幼年時代やユパとの出会いなどが考えられていました。

ナウシカの、幼少時代を描いたもの。風の谷の後継者たるナウシカは、5歳のときからタコを使い一人前の”風使い”になるべく訓練を受けはじめる。”風使い”とは、訓練により空気の流れを読み取る能力を身につけ、ふかいからくる胞子の危険を事前に察知したり蟲に襲われる小動物や任下を助けるものたちをいう。・・・そして幼いナウシカが学問と剣の師・ユパや小さい王蟲との出会いを通じて成長していく姿を描く。

これはこれで見てみたい作品ですが、この頃のイメージが数点、ナウシカ水彩画集に収録されています。
(城内を探検したり、幼いオームを連れて歩く楽しそうな幼いナウシカや、初めてフライトに挑戦するときの少女ナウシカなど)

さて、徳間書店とつきあいのある博報堂に、たまたま宮崎駿監督の弟さんがい偶然もかさなり、70分の番組は、共同での映画製作の話にまで発展します。

宮崎駿監督「映画化が本当に決まっちゃって、いざ決まってしまったら、自分で言ってたのに困ったんですね(笑)。アニメーションをやりたいけれども、やるとしたら『ナウシカ』しかないっていうね。『ナウシカ』ならできる、他に道はないっていうふうにはっきりしてましたから。どっち選ぶかっていうことでしょ?そうしたら、しょうがないやりましょうっていうことですよね。」(風の帰る場所より抜粋)

こうして、もともとは映画やアニメでは表現できない世界を描いていたはずだった「ナウシカ」は、映画化の道を歩みます。



映画の主題は、もともとはマンガと同じで、以下のものでした。

・自然と人間の関わり。
・バイオテクノロジーへの警鐘。
・クシャナの権力闘争。
・ペジテの権力闘争。
・ナウシカとクシャナの確執。
・緑の奇跡−風の谷の心なごむ生活。

しかし、どう縮めても、時間的制約のある映画でこれらの要素を詰め込むのは不可能との判断がなされ、土鬼(ドルク)の存在やクシャナの兄弟達との権力闘争をはじめとし、多くの要素が削除されました。


ちなみに、この作品には、本当に多くの才能あふれる人が参加しているのですが、現在から見ると、後に「新世紀エヴァンゲリオン」で大ブームをおこした庵野秀明氏が巨神兵の作成に加わっている点も、面白いと思います(詳細は「もののけ姫 VS エヴァンゲリオン・・宮崎監督と庵野監督の師弟対決について」参照)。庵野氏の立ち振る舞いは、安野モヨコさんによる「監督不行届!」で話題となりましたが、その振る舞いは当時から目立っていたようで、ナウシカガイドブックの変わり者スタッフ紹介でも400人中のトップに取り上げられています(「庵野くんは、あの大雪の日にも裸足でビーチサンダル。きたえれば寒くないそうです。そのきたえ方は並ではなく、黒く角質化し一部ヒビ割れたその足は、まさしく原人の足!」)。

この時の宮崎監督について、庵野秀明監督は後に、こう語っています。

「『ナウシカ』の時の宮さんは、楽しそうに燃えていましたね。当時、アニメの仕事を干されてて、しばらくぶりじゃないですか。結局、テレコムを辞めて悶々としたところで、マンガ描きませんかって、アニメージュの鈴木さんから話が来て。それで鈴木さんの尽力で、それが映画に。もう起死回生のチャンス。相当緊張しながらやってて良かったですよ。」(パラノ・エヴァンゲリオンより抜粋)

ちなみに、庵野監督は後にクシャナ戦記を作りたいと言って宮崎監督から断わられます。([[庵野監督によるクシャナ戦記製作の拒否]]参照)


さて、話を元に戻します。

映画は1984年に公開され、大ヒットします。

宮崎監督「僕はもう『ナウシカ』が公開されてからのね、ほんっとの感想っていうのは、とにかくこれで潰れなかったっていうことでしたね。また、ものを作るチャンスがめぐってくるかもしれないなって思って、本当にほっとしたんですよ。運がよかったと思って。だから『やった!』じゃなくて『切り抜けた』っていう実感のほうが強かったです(笑)。ほんっとにそうでした。なんて運がよかったんだろうと思って。」(風の帰る場所より抜粋)

アニメの仕事を干されていた宮崎監督にとって、絶対に失敗は許されない環境での大成功でした。

『キネマ旬報』の読者選出日本映画ベスト1にもなりました。
「宮崎駿」という名前が、アニメファンの枠をこえて、一般に認識されたのはこのタイミングだったと思います。



しかし、実際にはこの時点では、まだコミック版も2巻まで出た段階であり、物語の多くの要素は、未展開でした。


宮崎駿監督「なにしろ、膨大なストーリーでね。これからドルクの国をさんざん歩きまわって、僧院の奥深くに入りこんで、神聖皇帝は出るし。次にトルメキアへ行って、滅亡に瀕している老大国の中の権力争いにまきこまれて、それで生きながらえて、風の谷へ帰って来るんだけど・・帰って来れるんですかね!?(笑)」(ロマンアルバム「風の谷のナウシカ」より抜粋)

映画公開後、またコミック版の連載が再開されます。


しかし、その後も、「ラピュタ」や「トトロ」をはじめとした多くの映画が製作されるタイミングになると連載は中断され、映画製作がひと段落すると連載が再開されるということが続きます。

宮崎駿監督「再開の方向も自信もおぼつかなかったんですが、映画の内容にひっかかるものがあって、自分に無理強いしてつづけました。正直な話、次の映画のために連載を中断する時は、内心ホッとして机から逃げ出したといった方が正確でした。あまり、大きな声でいえることじゃないんです。次の映画が終って、しばらく休んでも、ナウシカの所へ戻るのはつらかった。結果的に4回も中断しちゃった。」


宮崎駿監督「(ラピュタから紅の豚までの軽めなアニメは)僕は『ナウシカ』を書いていたお陰でやれたんだという気がします。いちばん重いものとして『ナウシカ』があるわけです。ナウシカの世界に戻るのは、つらくて、戻りたくない」(コミックボックス「ナウシカ完結」特集号より抜粋)


結局、最終的に完結を見たのは1994年。
実に、製作開始から13年たっていました。

そして、そこには、2時間枠に縛られた映画では表現できない、豊かで深い様々なイメージが、見事に構築されていたのでした。

このような経緯により、風の谷のナウシカは、映画版と原作のマンガ版(コミック版)では、随分話が違います。

いろいろ違いますが、特に大きな違いを3つあげるとすると、映画の時間的制約から変更された以下の点でしょうか。

・マンガ版では物語の多くを占める土鬼(ドルク)の国が、映画では削除された。
・兄弟達との権力闘争を初めとする、クシャナ関連の様々な話が映画では削除された。
・映画は話をいったん完結させるため、独自のエンディングがつけられた。

原作ではトルメキアとドルクという2大国家の戦争を基本軸とし、それに巻き込まれる風の谷やペジテの物語だったのですが、映画では、フカイを焼こうとするトルメキアと、それに巻き込まれる風の谷やペジテの物語に変わっています。

つまり、もともとは人間同士(国家間)の戦いがベースになっていたのですが、戦争の当事者の一方(ドルク)が、映画の時間的制約のために削除されたためめ、人間と自然(腐海(フカイ))との関係に焦点が絞り込まれました。

そのために、映画のテーマは人と自然との関わりが中心となり、それにそった形で独自のエンディングが作られました。


このような違いが生じた理由は、映画の時間的制約の他にも2つあります。

ひとつには、原作がまだ第二巻(全七巻)の段階で映画が作られたため、原作全体からみると映画はごく初めの部分だけの物語だという点。

もうひとつには、原作がテーマ性をとことん追求しているのに対し、映画は、2時間の枠で起承転結つけて完結させるために、物語の構成や展開を変えているという点です。

映画は映画でとても魅力的な作品ですが、もしマンガ版を未読の方がいれば、是非読んでください。

いわゆる「宮崎アニメ」では描かれることの無い、魅力的で深い凄みのある「ナウシカ」の世界が描かれています。

なお、以下では、ナウシカの世界を味わうための、トピックスをまとめて行こうと思います。
<トピックス>
■[[風の谷]]
■[[ナウシカの母]]
■[[ナウシカの胸]]

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