4.ハウルは少年時代にカルシファーとなぜ、どういう契約を行ったのか 映画では、あまり説明がありませんが、小説版では、具体的な説明があります。 ソフィー「カルシファー。あんたって、もと流れ星だったんじゃない?」 カルシファー「そうさ。あんたが気づいてくれたからには、おいらも話せるよ。契約で自分からは話せないことになっているからね。」 ソフィー「で、ハウルに捕まったのね?」 カルシファー「5年前、ポートヘイヴンの湿原でね。ちょうどハウルがあそこで魔術師ジェンキンとして開業したばかりのころさ。 7リーグ靴をはいたハウルに追いまわされて、怖かった。どっちへ転がっても怖かったんだけど。だって、空から落ちたときに、もう死ぬってわかってたし。 死ぬぐらいなら、なんでもする気になった。だからハウルが、おいらを人間みたいにして生きのびさせてやろうか、と言ってくれたとき、契約をもちかけたんだ、おいらの方からね。 あのときは二人とも、そんな契約をしたらどうなっちまうか、わかってなかった。おいらは助けてもらったお礼がしたかったし、ハウルの方はおいらが気の毒だと思ってくれただけだもん」 しかし、この契約は、双方に問題をもたらすことがわかります。 カルシファー「長い目でみれば、お互いにためにならないんだ」 長い目でみると、どうしてお互いのためにならないのでしょうか。 契約をすると、お互いが相手の力を利用することができるため、魔術師としては、大変大きな力を手に入れられます。 しかし、相手に心をあずける時間があまりに長いと(小説版の荒地の魔女の例では)最後には星の子に完全に心を支配されてしまいます。 ただの操り人形の化け物となってしまうのです。 一方、星の子も、契約した相手が死ぬと自分の命もつきるため、次々と乗り移る相手を探すことになります。 まさに悪魔です。 この問題の別な面として、悪魔との契約を解く呪文の問題があります。そちらも参照ください。 では、最初に戻って、ハウルは何故星の子をとらえようとしたのでしょうか。 小説版のカルシファーの説明では、ハウルは星の子を気の毒に思ったとだけ言っています。 しかし、魔術師としてのハウルが、追い掛け回して星の子と契約した以上、そこには、魔術師としての自分の力を強化させたいという野心がないとはいえないでしょう。 それが、化け物に変身する衝動をおさえるハウルに表現されています。 (なお、巨大な力を得ようとすることと、その衝動を抑えることというのは、宮崎アニメの最大の本質的特徴のひとつです。詳しくはハウル論「殺戮兵器が恋をするまで」をお読みください。) 一方、映画版では、ハウルは星の子を追い回してはおらず、立ち止まったまま、落ちてくる星の子を受け止めています。 まさに、偶然、ぶつかったというイメージです。 これを、宮崎監督は、「星にぶつかった少年」という表現で呼んでいます。 声をやった木村拓也さんに、宮崎監督がまず言った言葉がこれでした。 ハウルを演じるにあたって、監督から具体的なアドバイスはありましたか? 木村「いや、(監督は)白髪の生えた少年なので具体的じゃないんですよ(笑)。 第一声で「この少年(ハウル)はね、星にぶつかった少年なんだよ!」と意味不明な説明をされまして・・まったく理解できないまま「わかりました!よろしくお願いします」と(笑)」 つまり、宮崎監督のイメージでは、まず、ハウルは、たまたま落ちてくる星に出会ってしまった少年なのです。 これは、他の宮崎作品と同じイメージです。 「未来少年コナン」におけるラナ、「天空の城ラピュタ」における、シータが空から降ってくるイメージ。 宮崎アニメにおいて、少年が冒険を始めるときには、いつも、空から新しい冒険の予感がふってくるものなのです。 [[ハウルの動く城の部屋:http://anime-room.jp/ghibli/%E3%83%8F%E3%82%A6%E3%83%AB%E3%81%AE%E5%8B%95%E3%81%8F%E5%9F%8E]]に戻る