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Diff of エヴスリンが文庫本三頁半分で描写した少女 :: アニメの部屋

Diff of xpwiki:エヴスリンが文庫本三頁半分で描写した少女

  
Cur: 2016-11-06 (Sun) 16:55:13 yasuaki[h3G7fWoxZgU] source[3] Edit[4]
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 +オデュッセウスがイタケの町につく前の最後の冒険の中心人物。
 +パイアケス人の国の王女、俊足の空想的な乙女で、その美しさは多くの求婚者をその島に引きつけていた。彼らの多くは美男でみな勇敢な男たちだったが、ナウシカはその求婚を全部断った。彼女は自分と同じように頭の回転が早く、普通の人間が見逃すようなことにも、自分と同様の反応をする男を望んでいたのだった。ナウシカは、まだ結婚するには若過ぎると父親に説得させ、海岸を散歩したり、海で泳いだり、竪琴をひいたり、自作の歌を歌ったりして、幸せに島で暮らし続けた。
 +ある時、彼女は海岸で侍女たちといっしょに、皮のボールを投げて遊んでいた。するとボールを追って走っていった侍女たちの一人が、悲鳴をあげてあとずさりした。血まみれの裸の男が岩の陰からはい出してきたのだった。それはオデュッセウスで、打ちのめされ、半殺しの状態で、岩だらけの海岸に打ち上げられ気を失っていたのが、いまようやく目をさましたところだった。海神レウコテア(イノ)のくれたヴェールも、彼が海に浮かんで漂流する助けとはなったが、岩に対して彼の身を守ってはくれなかった。
 +悲鳴をあげた女たちのなかでナウシカだけはこわがらなかった。
 +
 +ナウシカは彼女らを鎮めると、その男の方に近づいた。オデュッセウスはほとんど口をき
 +く力も残っていなかったが、それでも彼女を月の女神アルテミスと呼び、自分を黄泉の王ハデスに渡さないで、月の海の浅瀬に連れて来てくれたことをありがたく思うと言うだけの気転はもっていた。ナウシカはこの言葉に大変気をよくした。そこで侍女たちに命じてきれいな衣装をもってくるようにいいつけた。それから彼の傷をみずから手当し、大事な客人として、自分の城に連れてきた。
 +
 +両親たちはこれを喜ばなかった。というのはちょうどその朝、王は神託によって、難破船と、見ず知らずの他人と、ほら話をする人間には気をつけるようにといましめられた矢先だった。そこにナウシカが顔を興奮にほてらせて飛び込んできて、王に、難破した見知らぬ人が現われ、花を食べて眠る人間や片目の巨人たち、木のように背の高い人食い人種や人々を豚に変える女魔法使いの話などで、すっかり彼女をびっくりさせたことを報告したのである。
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 +王はこの新米の男が、とほうもないほら話をする、難破した見ず知らずの男で、つまり神託が注意するようにいったあらゆる点を兼ね備えた人物と知り、この男を殺そうと決心した。
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 +ただどんなにありがたくない客だとしても、主人役の王が自分の客をみずから殺すことは許されないことだった。しかし若い挺身たちにそれとなくヒントを与えて、けりをつけさせるのであれば、問題はない。そこで若者たちがこのよそ者を競技に誘い、円盤か槍の手元が狂ったことにして、どうしても名を明かさないこの男を、偶然の事故に見せかけて片づけてしまう手はずになっていた。
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 +だがこうした術策はオデュッセウスにとってはお手のものだった。若者の一人が円盤を投げ、彼にもっと遠くに投げられるかどうか挑むと、オデュッセウスは戦車の車を取り上げて、城壁に向かって投げ、塁壁を壊した。
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 +そのあとで彼は、槍か剣か、あるいは単に素手で自分と戦うものはいないか一同に向かって挑戦した。若者たちはみなこの挑戦を断わるだけの分別をもちあわせていた。
 +客がまだ生きているのを見て王は不興だったが、オデュッセウスに敬意を表して宴会を催さないわけにはいかなかった。
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 +宴会のあと、何とかこの見知らぬ人物の正体をつきとめようとしていたナウシカは、楽士の手からハーブを取って即興の歌を歌い始めた。彼女は英雄たちのこと、イアソンとそのアルゴ船の一行のこと、テーバイ攻めの7将や、カリュドンの猪狩りに集まった勇士たちのことを歌った。また、トロイアのこと、トロイアに戦った双方の英雄たちのことを歌い、そしていくたびも主導権をアガメムノンから奪い、劣勢をものともせずにギリシア勢の士気をたて直したイタケの王オデュッセウスがいかにアキレウスを説得し、鮮烈にもどってヘクトルを打ち負かすようすすめたか、そのいきさつも彼女は歌った。
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 +そして最後に彼女は、トロイアの木馬の大作戦のこと、その腹に隠れたつわものたちのことを歌った。並みいる宴席の客たちはこのしたたかな船乗りが顔を両手に埋めて泣くのを見て驚いた。オデュッセウスは涙に濡れた顔をあげ、「王陛下、どうかこの不覚の涙をお許しいただきたい。だが美しい王女の歌われたオデュッセウスこそ、この私なのだ」と言った。
 +
 +一同はどっとばかりに歓迎の歓声をあげた。世界中でオデュッセウスの名ほど赫々と輝く名はなかったからである。それでもなお王と王妃は、この誉れ高い客が早く出立することを望んだ。彼らは王女がオデュッセウスに恋することを心配したのだった。イタケに妻のいることも彼らは知っていた。彼らはオデュッセウスに山のように贈物を贈り、彼をせきたてて、すでにいつでも出帆できるようになっている船に乗せた。ナウシカは岸辺から船が見えなくなるまで見送っていた。
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 +だが、オデュッセウスがそれまでに出会い、彼を魅了して故郷のことを忘れさせようとしたすべての美しい女巨人たち、さまざまな森のニンフ、水のニンフたちのなかで、浜辺をすばらしい速さで駆け回り、自作の歌を歌うこの黒い目の乙女ほど、その心を深く動かしたものはいなかったという。
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 +ナウシカの方は、ある伝説によると、けっして結婚せず、最初の女吟遊詩人となって宮廷から宮廷へと旅し、英雄の歌、とくにオデュッセウスと、その恐ろしい地中海の島々をめぐりながらの冒険のかずかずを、歌い続けたという。ナウシカは最後にイタケの宮廷に至り、オデュッセウスの息子テレマコスと結婚したともいう。
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 +また、偶然出会ったある盲目の詩人が彼女の歌のすべてを編んで、ぼう大な歌のつづれ織をつくりあげてくれたという話もある。
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 +いずれにせよこの乙女は、偉大な航海者オデュッセウスの風雨にさらされた心の中に、かくべつの場所を占めていたのである。
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 +(教養文庫 バーナード・エヴスリン『ギリシア神話小事典』より抜粋)
  

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