10.カカシのカブとは何者なのか?
映画で若干謎が残る存在として、カカシのカブと犬のヒンがあります。
そのうち、カカシのカブは、実は隣の国の王子だったことがあかされます。
これは、小説版とは明確に異なる設定です。
小説では、カカシや犬(犬になったり人になったりする犬人間として登場)は、実は国王の弟のジャスティン殿下や魔法使いサリマン(映画とは異なる設定)といった人間達が、荒地の魔女によって変身させられた姿なのです。
同じような存在として、カカシと犬のほかに、小説では頭蓋骨も登場します。
映画ハウルのイメージ・ボードを見ると、テーブルの上に頭蓋骨がのっていたりもしますから、ある時期、小説に近い展開も考えられていたことがわかります。
ところが、最終的な映画では、ご存知のように、かかしは隣の国の王子、犬のヒンは謎の存在となります。
なぜでしょうか?
あまり語られませんが、宮崎作品の大きなテーマは、「純粋な機械が、少女に助けられて人間になっていく」というものです。
詳細は私のハウルの動く城論をお読みください。
そのような観点でみると、カカシのカブのエピソードというのは、宮崎作品の真髄を体現していることがわかります。
初めは、ただの物であったものが、少女に助けられて命を持ち、純粋無垢に少女を助けようとつとめ、最後は美しい人間になっていく・・
カカシのカブの設定が小説とは全く異なる物語に変更されたのは、少女に息を吹き込まれるカカシという設定が、宮崎監督の作品モチーフにとって、本質的な物語に非常に近かったためと考えられます。
あのエピソードの中には、宮崎アニメ全作品のエッセンスが凝縮されているのです。
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