まず、紅の豚はなぜ「紅」なのでしょうか?
これは一見どうでもいい質問ですが、実は紅の豚を理解するうえで必須の質問です。
表面的な説明としては、以下のように宮崎監督は説明しています。
「赤い飛行艇に乗っているから赤豚野郎って言われている」
「赤い豚っていうより紅のほうが、もっともらしくて冗談ぽいからいいんじゃないかっていう」
ところが、同じインタビューの中で、話がはずんでくると全く違う意味合いが見えてきます。
「オレは最後の赤になるぞ」っていう感じで、一匹だけ飛んでる豚になっちゃった。
ここでの赤というのは、社会主義者(マルクス主義者)という意味です。
「つまり赤い豚っていうふうに決めた時に、それはどういう意味を持っているかっていうのは最初から予感がありましたから。なぜ、”さくらんぼの実る頃”っていう歌を使ったかっていったら、それはやっぱり空想社会主義といわれようとなんだろうと、とにかく一番ピュアに理想が出たのが”パリ・コミューン”ですからね。やっぱりその歌が好きだって豚を出すっていうのは、大体もう決まってるんですよ、それは(笑)」(以上、「風の帰る場所」より抜粋)
つまり、なぜ紅かというと、それは、最後の社会主義者(19世紀のパリ・コミューンの頃の理想を懐かしむ社会主義者)という意味が込められているのです。
このことは、加藤登紀子さんとの対談集「時には昔の話を」でもこう説明されています。
「『さくらんぼ』は痛みのある追憶の歌でしょう。1871年のパリ・コミューンへの思いを込めた。だから、1920年代になって、半世紀も前の歌を愛しながら、真っ赤な飛行機に乗って飛び続ける「豚」に託された心情というのは、おそらくうまく伝わらないだろうとわかっているんだけど、それはまあ、作る側のひそかな楽しみですから。」
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