スタジオジブリの新作である「かぐや姫の物語」を公開初日の第一回上映で見てきました。
最初の感想は、とにかく映像が美しいということ。キャラクターと背景が一体となり、各シーンがまさに絵画のように美しくなっています。とくに、季節感を感じさせるシーン(雪のシーン、桜のシーンなど)はとりわけ美しく、背景を薄くぼかす墨絵的手法も組み合わさり、日本画の数々を見るようでした。
そこに、美しいかぐや姫が加わると、まさに、宣伝通りの「ジブリヒロイン史上、最高の”絶世の美女”」という感じです。
高畑勲監督は、78歳とのことですが、いまだに新しいアニメの映像技法を開拓し続けるという点で、すごいと思います。
ストーリー的には、大枠は要するに「かぐや姫」なのですが、幼少時のエピソードが丁寧に描かれており、じっくりと味わうことができました。また、成人してからの姫の悩みも、現代女性の悩みにも通ずるところがあるように描かれており、単なる昔話としてではなく見ることができます。少なくとも、うちの妻は、そういう観点で感情移入してみていました。
その意味で、山で元気に生活していたハイジが、町の生活になじめなくなる「アルプスの少女ハイジ」を思い出しましたが、パンフを見ると、それこそまさにこの映画の一つの狙いだったようです(日本版のハイジ)。
一方、月世界等のSF設定についてはあまり語られておらず、キャッチコピーである「姫の犯した罪と罰」についても、詳しい説明はありません。映画だけだと若干謎が残るのですが、映画館で売っているパンフレットを読めば、大体わかるようになっています。
ただ、高畑監督の書いたもの(映画館配布のチラシに記載されていたもの)を読むと、当初は、月世界のエピソードから始まるストーリーを構想していたようです。
となると、最初に月世界における姫の罪と罰の説明があり、その中で、地球に下されることと、助けが必要になれば、自動的に救出に向かうことが説明されたのでしょう。
そうなると、映画を見ている観客としては、どのタイミングで姫が救助を願うのだろうと、ハラハラドキドキしながら見ることになったかもしれません。
その意味では、当初案の方が盛り上がりはあったかもしれません。
逆に、完成した本映画は、SF的な設定を省略したことで、原作通りの美しい話になったともいえます。
どちらが良いかは、好みが分かれるところかと思いました。私としては、当初案どおり月のシーンから始まった方が、盛り上がりの点と、物語のわかりやすさの点で良いのではないかと思いましたが、妻は、この映画通りの方が良かったといっていました。
結局、「姫の犯した罪と罰」の内容に、どの程度関心があるかよるようです。そこを詳しくしりたい人は、月のシーンの説明がもっとほしいでしょうし、そこにはあまり関心がなければ、映画通りの展開の方が美しくて良いのではないでしょうか。
あと、キャラクターで印象深かったのは、姫の御付きである「女童(めのわらわ)」。
かわいくて、なかなか味がある動きも多くて良かったのですが、そこは当初からの狙いだったようで、映画館のお土産売り場には女童のグッズも売っていました。
音楽もよかったです。歌詞がストーリーの謎を解くキーワードにもなっているのですが、そのあたりもよかったと思います。
未見の方は、ぜひ、映画を見に行ってください。
また、いくつかの設定はわかりにくいため、パンフレットを参考に、解説とQA集も作りました。