「風立ちぬ」の感想

公開初日、風立ちぬを見てきました。

まずは簡単な感想を書きます。

一言でいうと、予想と異なる、良くも悪くも不思議な感触の映画でした。

思ったほど反戦メッセージが強くなく、劇的で感動的な展開もありません。

「泣ける」という話も聞きますし、それもわかるのですが、恋愛ドラマ、メロドラマ的な観点で言うと、鈴木プロデューサー自身が映画宣伝の中で、あっさりネタバラシしていたので、展開的な驚きは無いし(⇒鈴木プロデューサーには、問題ありと考えます。映画公開前にテレビでラストの展開を話すとは・・。まあ、ある程度予想できるにせよ・・)

反戦メッセージという意味では、現在ジブリのページで公開されている宮崎駿監督やその他のジブリ関係者による、憲法問題の文章の方が、はるかに強く明確なメッセージです。

「困難な時代」を描くという点では、肝心の第二次世界大戦が、ほぼ何も触れられていません。また、主人公のモデルとなった堀越次郎さんが感じた、神風特攻隊に対するショックのようなものも触れられていません。

ストーリー的には、主人公とヒロインの関係を描いた部分、主人公の設計者としての活動を描く部分、主人公の夢あるいは妄想の3部で構成されています。

この3つを結びつけるというアイデアはすごいと思います。ただし、以下の問題があります。

、主人公の夢あるいは妄想の部分は、主人公の夢であり、イタリアの設計士の夢であり、宮崎監督の夢でもあります。宮崎監督の戦記ものを読んだことがある人なら、ご存じでしょう。ただ、同じ夢を共有していない人にとっては、ちょっと長いかもしれません。

主人公とヒロインの関係を描いた部分は、堀辰雄の「風立ちぬ」をベースにしています。美しい話ですが、原作にある、リアリティや恐怖(サナトリウムの他の患者達が死んでいく点など)は取り除いています。さらに、先述のように、鈴木プロデューサーがネタバラシをしています。

主人公の設計者としての活躍を描く部分は、時間をかけていますが、先述のように、第二次大戦に対する主人公の思いは、ほぼ省かれています。

この結果、反戦や、恋愛ものとしての色よりも、主人公の夢および妄想の部分の印象が強いものとなっており、ストーリーとしての驚きやメッセージが弱くなっています。

更にいうと、主人公とヒロインの関係を描いた部分や、設計者としての活躍の部分には、宮崎駿監督の個人的な様々な思いが、ひそかに反映されております。

長くなるので、その点は、またそのうち書きます。

 

 

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