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プロデューサー・大澤信博 ロングインタビュー!(アニメ・ゲームの“中の人” 第40回) (2020/2/8 10:00:00)
ライターcrepuscularのインタビュー連載第40回は、株式会社EGG FIRM(エッグファーム)代表で、プロデューサーの大澤信博さん。大澤さんは、「ソードアート・オンライン」や「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」といった人気ライトノベル原作をアニメでも大成功させた、業界きってのすご腕プロデューサーだ。プロデュース作品は日本国内だけでなく海外でも賞賛され、「斉木楠雄のΨ難」などはテレビからNetflix配信へと活躍の場を広げている。キャリア初期にあの伝説のロボットアニメ「機動警察パトレイバー」の製作に関わり、株式会社ジェンコ在籍時には「おねがい☆ティーチャー」、「ハチミツとクローバー」、「のだめカンタービレ」、「とらドラ!」、「アクセル・ワールド」といったアニメ史に残る名作を多数手がけた。記事ではそうした大澤さんの豊富な仕事歴をていねいに紐解きながら、コンテンツプロデュースの要諦とは何か、アニメ業界が抱える課題にはどう向き合えばいいのか、今後どういった挑戦をしようとしているのか、といった質問にも正面から答えていただいた。新設の株式会社スタジオバインドと同社制作の「無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜」にかける思いもうかがっているので、新旧問わずアニメ好きの方はぜひチェックしていただきたい。
プロデューサーは「作品の経営者」
─本日はどうぞよろしくお願いいたします。早速ですが、大澤さんはアニメ業界に入られてどのくらいになるのでしょうか?
大澤信博(以下、大澤)
一番最初は、前々職の東北新社でやった「機動警察パトレイバー」初期OVA(1988〜89)で、現場側ではなくて、出資者側のAP(アシスタント・プロデューサー)です。新卒で入って最初の仕事が、「パトレイバー」だったんですよ。ここがスタートで、真木太郎さんのジェンコに入ったのが1998年で、そこからはずっとプロデューサーをやっていました。アニメのプロデューサーという意味ではジェンコに入ってからだから、22年ぐらいになりますね。
─アニメのプロデューサーは、どういう存在だとお考えですか?
大澤
本来的な意味で言うと、「作品の経営者」だと思うんですよ。日本のアニメの場合は、内容に関しては監督が引っ張ることが多いんですけど、関わる人数は述べで言うと1000人以上になりますから、そうした方々の取りまとめ役を行っているのはプロデューサーになります。企画立案、スケジュール管理、金銭管理、クオリティ・コントロールということを、作品の社長みたいな立場で行うわけです。
─どういう時にお仕事のやりがいを感じますか?
大澤
僕は現場、制作プロダクションのプロデューサーじゃないので、できあがった時というよりは、それをユーザーさんとか観客の方に観てもらってリアクションをもらった時ですね。僕はなるべく上映会イベントにも顔を出すようにしているんですけど、そこでお客さんが喜んでくれているのを見ると、「ああ、作った甲斐があったな!」と感じます。現場では画が上がってくるたびに一喜一憂するし、シナリオ開発でもいろいろありますけど、最終的にはやっぱり、お客さんの反応だと思いますね。
─影響を受けた作品は?
大澤
伊藤和典さんの「機動警察パトレイバー」の脚本というのは、本当にすばらしかったです。今でも屈指のアニメ脚本だと思っています。真木さんからシナリオを渡された時は、最初の仕事ということもあって、何度も繰り返し読みましたね。シナリオはもちろんテキストなんですけど、「二課の一番長い日」のエピソードなんかは陰謀やそれに振り回される面々の顔が目に浮かぶようでした。
仕事をする前は、「宇宙戦艦ヤマト」(1974〜75)、「ガンバの冒険」(1975)、「機動戦士ガンダム」(1979〜80)、あとはギリギリで押井守監督の「うる星やつら2
ビューティフル・ドリーマー」(1984)とかを観ていましたけど、今で言うアニメオタクみたいな感じではなかったですね。実際観ていたのは、実写のほうが多かったですし。
本当に趣味で言っちゃうと、リドリー・スコット監督の「ブレードランナー」とか、テリー・ギリアム監督の「未来世紀ブラジル」とか、クリストファー・ノーラン監督の「ダークナイト」といったSFが好きなんですけど、あくまで趣味だから、仕事をするうえで影響を受けた作品とは言えないです。
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