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美術監督・海野よしみ ロングインタビュー!(アニメ・ゲームの“中の人” 第36回) (2019/10/26 12:00:00)
連載第36回でライターcrepuscularがお話をうかがうのは、株式会社プロダクション・アイ取締役で、美術監督の海野よしみさん。海野さんといえば、「ゆるキャン△」の美しい大自然の風景が記憶に新しい。なかんずくご自身も筆を執ったという四尾連湖の紅葉は、まさに“聖地”と呼ぶにふさわしい絶景である。1990年代は「宇宙の騎士テッカマンブレード」や「BLUE SEED」で、2000年代は「.hack」シリーズや「喰霊-零-」で、アニメ史に残る名舞台を作り上げてきた。近年も「ゆるキャン△」のほか、「聖闘士星矢 黄金魂 -soul of gold-」、「ゼーガペインADP」、「Wake Up, Girls! 新章」などで、大いに存在感を発揮している。意外に思われるかもしれないが、「soul of gold」は、海野さんにとって初めての「聖闘士星矢」シリーズである。今回の単独インタビューでは、そんな海野さんのキャリアや創作論をじっくりと語っていただいた。(編注:「ゆるキャン△」については、京極義昭監督の特別インタビュー( https://akiba-souken.com/article/32693/ )もあわせてお読みいただきたい。)
設定もBGも描く美術監督
─本日はどうぞよろしくお願いいたします。最初に、海野さんが考えるアニメ美術の魅力を教えていただけますか?
海野よしみ(以下、海野) )
自分の描いた画にセルや音楽が重なったり、撮影さんが入って違う要素がつけ足されたりすることで、思ってもみない100万倍のパワーで表現されていく感じが、非常におもしろいなと思います。
─カットによってはキャラクターで背景がほとんど見えなかったり、撮影処理で背景がボヤけたりすることもありますが……。
海野
それは演出上必要だからしていることですし、テレビで観ていて、「こういうふうになったんだ。きれいだな」と思うことが多いので、楽しいですよ。
─海野さんが美術監督で参加されている作品では、「美術設定」というポジションが置かれていないことが多いようです。何か理由があるのでしょうか?
海野
プロダクション・アイでは昔からそうだったんです。美術監督が設定を起こして、ボードも描いて、BG(編注:劇中背景のこと)も描いて、みたいな。最近は分担作業も多いですが、昔は何でもかんでも美監が描いていたりしていました。
─「へうげもの」(2011〜12)や「ゆるキャン△」(2018)には「美術設定」クレジットが見当たりませんので、海野さんが設定も作れらたと理解してよろしいですか?
海野
「へうげもの」は私も設定を描きました。私が忙しい時にはアイプロの美術設定、長澤順子が手伝ってくれたところもたくさんあります。時間が空いているほうが描いている、そんな感じだったと思います。
─美術設定は一般的に、建築家の設計図やインテリアコーディネーターの図面とは異なり、シナリオや演出プランに従って部屋の間取りや装飾を考えていくそうですが、原作との兼ね合いはどうされていますか?
海野
基本的に原作準拠ですが、キャラの性格だとか生活の様子を想像しながら、「こんな部屋がいいんじゃないか」といろいろ思い巡らせて作っています。
─「ベン・トー」(2011)は、スーパーで半額弁当を奪い合うというコンセプトがあり、戦闘中はカメラが回転していました。スーパーの設定で何か特別な作り方はありましたか?
海野
大人数で戦いやすいように、お弁当の売り場はかなり広くしています。あと板垣伸監督のこだわりで、スーパーの一軒一軒、「ここは何売場で、ここは何売場」というのを最初に決めておいて、「ここからは何が見える、というのが確実にわかるようにしておいてほしい」という依頼がありました。
─オープニング冒頭、カメラが商品棚でできた通路を移動して半額弁当に向かっていく流れがありますが、あそこはプロダクション・アイで作られた3Dなのでしょうか?
海野
うちから商品棚や小物を素材として出しているとは思うんですけど、まとめて画にしてくださったのは、デイヴィッドプロダクションさんです。アニメーションプロデューサーの笠間寿高さんが、スーパーのことをとてもよくご存じでした。
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