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作曲家・羽岡佳 ロングインタビュー!(アニメ・ゲームの“中の人” 第34回) (2019/7/14 10:00:00)
“中の人”を知れば、アニメ・ゲームがもっとおもしろくなる。ライターcrepuscularのインタビュー連載第34回は、作曲家の羽岡佳さん。羽岡さんは、大ヒットアニメ「かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜」の劇伴作家で、ファンの間で話題になった藤原書記のラップ「ドーンだYO!!」も、羽岡さんの楽曲だ。新房昭之監督作品である「ぱにぽにだっしゅ」、「ネギま!?」、「花物語」、「憑物語」、「終物語」、「続・終物語」にも参加し、それぞれの世界観・キャラクターにぴったりのスコアを提供している。現在は、筝曲部を舞台にした青春ドラマ「この音とまれ!」において、実写顔負けのオーケストラを堪能することができる。そんな羽岡さんの転機は、デビュー作の、とある脚本家との出会いにあった。今回の単独インタビューではこれまでの歩みを振り返りながら、独自の作曲手法、アニメと実写の違い、名曲誕生の舞台裏、今後の抱負等についてたっぷり語っていただいた。
アニメと実写で違う音楽的チャンス
─お忙しい中、お会いできて光栄です。早速ですが、羽岡さんがお仕事のやりがいを感じるのはどんな時でしょうか?
羽岡佳(以下、羽岡)
楽しみにしているファンの方がたくさんいらっしゃる作品に、音楽を通して参加できる、ということをいつもうれしく思っています。あと音楽家としては、一流の演奏家やレコーディング・エンジニアの方々と、スタジオでレコーディングをする機会をいただけることも、楽しみのひとつです。
─羽岡さんは実写ドラマでも活躍されており、2019年は「孤高のメス」などの劇伴を担当されています。アニメならではの魅力というのはありますか?
羽岡
アニメの劇伴ですと、実験的な音楽を作曲できる機会が多いかもしれません。音楽的にいろんなことをやらせていただける機会が多いので、そういうところにおもしろさを感じます。
─創作活動にあたり、影響を受けた作品は?
羽岡
アニメ作品では「風の谷のナウシカ」(1984)と「天空の城ラピュタ」(1986)は、原点というか、作品的にも音楽的に元になっている気がします。特に「ナウシカ」は、僕が小学校低学年の時に上映されて、とても印象に残りました。
それほどしっかりストーリーを理解できたわけではありませんが、それでもとても感動し、そして久石譲さんの魅力的な音楽は、作曲に興味を持つきっかけのひとつになりました。僕は当時、まだ楽器を習っていませんでしたが、親の仕事の関係で家にピアノやシンセサイザー等たくさんの楽器があったので、「ナウシカ」や「ラピュタ」の音楽を弾いてみたりしていました。そういうことをしているうちにだんだんと、作曲みたいなことをするようになっていきました。
─現在は、月にどのくらい音楽を聴いているのでしょうか?
羽岡
幅広くはまだまだできていないかもしれませんが、仕事の打ち合わせや雑談で監督やプロデューサーから出てきた作品は、積極的に観たり聴いたりするようにしています。必ずしも自分の作品に生かすことができるというわけでもないのですが、監督やプロデューサーといったクリエイターの方々が、何を観て何を感じているのか、できれば知っておきたいと思っています。
「物語」シリーズで気をつけた「語りのテンション」
─お得意なジャンルや音作りはありますか? たとえば「花物語」(2014)では、短いピアノモチーフを用いて、多様なシーンの音景を作っておられました。駿河と蠟花の緊迫した1on1で使用された「バスケットボール」、影絵を使った蠟花の相談者エピソード「ナンバーゼロイチ」、駿河と阿良々木の再会を彩った「タイミングのいい奴」、水であふれたバスケットコートの不気味さを表した「想定外」などが印象的です。
羽岡
自分としては得意な分野とか、そういうのはあまりないです。作品ごとにさまざまなオーダーをいただくので、その都度作品に合った音楽はどんなものか考えて、制作するようにしています。「物語」シリーズでは、新房昭之監督と音響監督の鶴岡陽太さん、音楽プロデューサーの山内真治さんから「ミニマル・ミュージックで」とのお話があったので、クラシック寄りのミニマル・ミュージックから始めて、少しずつシンセを入れてエレクトロな方向に行ったりとか、オーケストラっぽくやってみたりとか、そんなことを試行錯誤しながら作りました。
─「花物語」もそうですが、「物語」シリーズは、劇伴が映像のリズムを作るうえで重要な役割を果たしていますね。
羽岡
「物語」シリーズは、あまりシチュエーションが変わらず、「淡々と語る」シーンが多いので、その語りのテンションには気をつけて作曲しました。日常があったり、事件があったり、サスペンスがあったり、ということがあまりない。音楽の作り方も普段とは違う形になっています。
─「普段とは違う形」というと?
羽岡
テレビシリーズの劇伴は、メニューと打ち合わせの内容を基に、絵コンテや台本、原作を見ながら作ることが多いですが、「物語」シリーズでは、作曲の段階で音声も含めてかなり完成形に近い動画をいただきました。最新作の「続・終物語」(2019)も、そうでした。そのおかげで雰囲気や会話のテンポ感を参考に制作することができました。「淡々と語る」そのテンションは、絵コンテや台本だけだとどうしてもわかりにくいところですが、動画があったので、映像のリズムやセリフのテンションに寄り添うことができたのではないかと思います。
─「れでぃ×ばと!」(2010)は、舞台がお嬢様学校ということもあって、本格的なクラシックが多くなっていました。特に、ハープとフルートの流れるような美しいハーモニーが特徴の「白麗陵学院」や、ヒロインの清く気高い心を感じさせるストリングス曲「フレイムハート」などは、映像を離れて音楽そのものにも、じっくりと聴き入らせる魅力がありました。
羽岡
ありがとうございます。この作品は、大槻敦史監督と音響監督の明田川仁さんからのオーダーと、最初にいただいた資料を見て、そういう雰囲気を感じました。
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