第1章 シトは人類の脅威だったのか
シトは、常に人類への脅威として語られてきました。実際のところはどうだったのでしょうか。
シト脅威論の根拠は、
@シトが街を破壊し、ヒトを襲う。
Aシトがサードインパクトを起こし、人類は滅亡する。
おおまかに言うと、この2点でしょうか。
順に考えてみます。
<シトは街の破壊や、ヒトを殺すことを目的に動いたか>
シトにより、多くの人が殺されたのは事実でしょう。
しかしながら、シト自身が、ヒトを殺すことを目的に動いたかと考えると、どうでしょうか。
シトの行動はかなり特徴的で、ほとんど常に、ターミナルドグマを目指しています。そして、その過程で邪魔をするモノに対しては、容赦無く攻撃を加えます。
ところが、ヒトを殺すことを目的に動き回ったことは一度もありません。常に、自分の進路上にあるものを払いのけるだけであり、それ以外の、人間や建造物には一切興味を示しません。あくまでも、邪魔をする人間やエヴァ、建物に対してのみ、攻撃力を振るうだけです。
つまり、シトは、ヒトを襲うことや街を破壊することは目的としてはいなかったと考えるべきでしょう。人間に対しては、遠慮もしないかわりに、強い関心も持っていませんでした.
もし、第三新東京という迎撃都市を作らずに、つまり、あのあたりには人が住まないようにしていれば、犠牲者はほとんどでなかったのではないでしょうか。
<シトはサードインパクトをおこし、人類を滅亡させたか。>
カジ「そうだ。シトがこの地下に眠るアダムと接触すれば、人は全て滅びるといわれている。サードインパクトでね。」
ウワサは様々に流れていました。
シト(もしくはエヴァ)がアダムと接触すれば、人は滅びる、と。
しかしながら、それは本当でしょうか。
22話ミサト「しかし、アダムとエヴァの接触はサードインパクトを引き起こす可能性が!」
「あまりに危険です。碇指令。やめてください!」
沈黙するゲンドウ。
ミサト「ウソ,欺瞞なのね。セカンドインパクトはシトの接触が原因ではないのね。」
「サード・インパクトは起きない、というわけね、そんなことでは」
ウワサのひとつでは、エヴァが地下のアダムと接触することも危険なはずでしたが、実際はそんなこともありませんでした。
そもそも、地下のアダムという情報さえ、偽の情報でした。
カヲルがターミナルドグマに降りたときでさえ、NERV首脳には、その目的が何なのか、実はわかっていません。
冬月「弐号機と合体する気か。」
ゲンドウ「もしくは、破滅を導くか、だ」
つまり、破滅が導かれる可能性もあるし、そうでないのかもしれないわけです。
実際、カヲルとアダム(実はリリス)の接触は、破滅(サードインパクト含む)をもたらしませんでした。
さて、上記のように、シトが、人を殺すことを目的に動いていたわけではなく、また、サードインパクトをもたらすかどうかも曖昧となると、あれほど確定的に言われていたシトについてのウワサは何だったのかという気にもなります。
ウワサ(誰かの発言や考え)を全て無視し、事実だけを考えてみると
1.シトが滅びることが生命の木の出現、つまりサードインパクトの前提であった。
2. しかし、シトがサードインパクトを起こすと言ってゼーレはシトを殲滅した
3. 次に、ネルフがサードインパクトを起こすと言ってゼーレはネルフを攻撃した
4.
最後に、実際にサードインパクトを起こしたのはゼーレだった。
事実だけを見れば、結論は一つでしょう。
サードインパクトを起こそうとしたのはゼーレです。
ゼーレは、自分たちの都合がいいように国連を動かすため、シトがサードインパクトを起こすという情報を流し、莫大な資金を使って、エヴァを製造し、シトを殲滅しました.
そして、生命の木を出現させる条件が整った、つまりサードインパクトが起きる条件が整ったあとに、今度はまた、自分たちに邪魔な存在であるネルフが、サードインパクトを起こそうとしているという情報を流して、ネルフを攻撃しました。
そして、シトを殺しネルフを破壊した後に、自分たちが目指していたサードインパクトを起こしたわけです。
もちろん、シトが人類にとって脅威だった可能性はあります。しかし、それを証明する事件は、何ひとつ起きていませんでした.人類は、シトがターミナルドグマに近づくことを、要塞都市やエヴァまで作って戦い、やめさせるべきだったのかどうか、はっきりしたことは誰にもわかりません。
シトの自由にさせておいても、人類は別にどうということはなかった可能性もあるのかもしれません。
カヲル「アダムより生まれしものはアダムに帰らねばならないのか。結果ヒトを滅ぼしてまで」
カヲル「滅びの時を免れ、未来を与えられる生命体は一つしか選ばれないんだ」
このように言っていることから、滅亡する生命体もあったかもしれません。
しかし、それは、ゼーレがセカンドインパクトでシトにちょっかいを出さなければ、ずっと遠い将来の話だったかもしれません。逆に、カヲルがアダムではなくリリスであることを知ってヒトを滅ぼすことをやめたように、セカンドインパクトを起こした結果、シトがアダムにかえることは不可能になっていたのかもしれません。
そうだとすると、他のシトも、セカンドインパクト以降はヒトに脅威をもたらす存在ではなかったのかもしれません。
何よりも、このような発言をしているカヲル自身が自ら死を選んだように、「シトのターミナルドグマ進入=人類の滅亡」という公式は、少なくとも事実ではなかったのです。
真実はわかりません。結論はこうです。
シトは人類を滅ぼす存在だった可能性はある。しかし、本当にそうだという証拠はない。
はっきりしている事実は、
<ゼーレはサードインパクトを起こす目的をもっていた。そのために、国連および各国政府にシト脅威論を流布し、政治的・経済的に自分たちにとって都合がいい状況を作りだし、エヴァを作ってシトを撃滅。これにより、生命の木の出現が可能な状況、つまりサードインパクトが可能な状況にした。そして、今度は邪魔であるネルフ脅威論を流布し、攻撃。このようにして準備を整え、サードインパクトを起こした。>
ということです。
シトは人類の脅威であったかもしれないし、そうでないかもしれないが、確実なのは、ゼーレがサードインパクトを起こすための道具として、シトは利用され、殲滅されたということです。
もしかすると、シトは、ゼーレの言い訳に利用されたスケープゴートに過ぎなかったのかもしれません。
<結論1>
シトがヒトに何をしようとしたかは不明である。はっきりしているのは、ゼーレにはシトを殺す動機があったこと、シトの恐怖を言いたてて、国際社会を利用し、自分たちの目的(サードインパクト)を達成したことである。