ミサト、加持の思想

 

14話「ただひとつはっきりとしているのは、セカンドインパクトを起こした使徒を倒す。そのためにネルフに入ったわ。」

このセリフに代表されるように、ミサトは基本的には、使徒を倒すことを目指しています。しかしながら、彼女の思想を語る場合、決定的なのは、別なところにあります。

 

<ミサトが加持から受け取ったもの>

ミサトは、加持の情報と思想を継ぐものでもあります。加持は、自分の中の真実を追ったあげく、最後にはそれをミサトに託します。加持からすると、元恋人という点を差し引いても、ミサトこそ、彼の心の真実をもっとも継承してくれる存在だったのでしょう。

21話加持「ただ、真実に近づきたいだけなんです。ぼくの中のね。」

      「かつらぎ、真実は君と共にある。迷わずに進んでくれ。」

23話加持「君がほしがっていた真実の一部だ。他に36の手段を講じて君に送っているが、恐らくとどかないだろう。確実なのは、このカプセルだけだ。これは俺の全てだ。」

   ミサト「鳴らない電話を気にしていらつくのはもうやめるわ。加持君。あなたの心、受け取ったもの。」

 

ここで、加持がミサトに渡したのは、カプセルに入った情報ですが、それだけではなく、「心」もミサトは受け取ります。

 

<加持がシンジに伝えようとしたこと>

そして、加持が、自分が死ぬ直前にことあるごとにシンジへと伝えようとしたのは、「ATフィールドを恐れないこと」「決断をおそれないこと」でした。

17話加持「けど、つらいこと知ってる人間の方が、それだけ人に優しくできる。それは弱さとは違うからな。」(A)

18話加持「わかった気がするだけさ。人は他人を完全には理解できない。自分自身だってあやしいものだ。100%理解しあうのは不可能なんだよ。まあ、だからこそ、人は自分を、他人を知ろうとする。だからおもしろいんだな。人生は」(A)

19話加持「俺も強要はしない。自分で考え、自分できめろ。自分が何をすべきなのかを。ま、後悔のないようにな。」(B)

 

<ミサトがシンジに伝えようとしたこと>

加持と同様に、その情報と心を継いだミサトも、そのことをシンジに十字架のロザリオと共に伝えます。

 

TV版25話ミサト「人の心を一つにまとめ、お互いに補填しあおうというわけ。」

   「それも他人がかってに、よけいなお世話だわ。そんなのただのなれ合いじゃない。」(A)

25話ミサト「でき損ないの群体として、すでに行き詰まった人類を完全な単体としての生物へと人工進化させる補完計画。まさに理想の世界ね。そのためにまだ委員会は使うつもりなんだわ。アダムやネルフではなく、あのエヴァを。加持君の予想通りにね。」

   ミサト「いい、アスカ、エヴァシリーズは必ずせん滅するのよ」

   ミサト「自分が嫌いなのね。だから人も傷つける。自分が傷つくより人を傷つけた方が心が痛いことを知っているから。でも、どんな思いが待っていてもそれはあなたが自分一人で決めたことだわ。価値のあることなのよ。」(A+B)

   ミサト「他人だからどうだってのよ。あんたこのままやめるつもり、今ここで何もしなかったら、あたし許さないからね。一生あんたを許さないからね。」

   ミサト「今の自分が絶対じゃないわ。後で間違いに気づき、後悔する。あたしはその繰り返しだった。ぬか喜びも、自己嫌悪を重ねるだけ。でも、その度に前に進めた気がする。」(B)

 25話ミサト「加持くん。あたし、これでよかったわよね。」  

 

<シンジが受け取ったもの>

つまり、ミサトは、加持から情報をカプセルで受け取り、調査を引き継ぐ一方、加持もミサトも共に、シンジに対して「こころ」を伝えようとしました。

ATフィールド(「人は他人を完全には理解できない」)を恐れないこと(A)

自分の決断を恐れないこと(B)

 

これが、ATフィールドがなくなった世界において、シンジの手にある十字架のペンダントに象徴されます。シンジは、自分がいない世界において、ミサトから受け取った十字架を見つめます。

 26話カヲル「再びATフィールドが、君や他人を傷つけてもいいのかい?」

    シンジ「かまわない。でも、ぼくの心の中にいる君達は何?」

    レイ「希望なのよ。人は互いに分かり合えるかもしれない、ということの」

    カヲル「好きだ。という言葉とともにね。」

    シンジ「だけど、それは見せかけなんだ。自分勝手な思いこみなんだ。祈りみたいなものなんだ。ずっと続くはずはないんだ。いつかは裏切られるんだ。ぼくを見捨てるんだ」(A)

    シンジ「でも、ぼくはもう一度会いたいと思った。その時の気持ちは本当だと思うから。」(B)

 

最後の二つの言葉は、加持とミサトの心をシンジが自分なりに受け継いだ事のあかしでしょう。

 

 


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