アスカ、心の不安
【PSP版エヴァ2〜造られし世界〜:アスカシナリオ「脆いところへくちづけを」心理描写&解説】
(※これからPSP版エヴァ2をプレイするという方は、シナリオをクリアした後に見ることをお勧めします)
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『自分を突き動かすもの』
(『心の迷宮に入る』コマンド実行、アスカ編)
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アスカ「人に認めてもらう。それが私の存在意義。それが私を突き動かすモノ。私を見て欲しかったから。私を捨てないで欲しかったから。そして、私はみんなから期待されている。必要とされている。必要とされているのよ」
−本当に?−
アスカ「そうなのよ。私が活躍し続ける限り、私は必要とされるのよ。そしてそれは簡単なこと。私だからやってのけるのよ」
−しかし、それはやがて裏切られる−
アスカ「結果が証明するわ。私は最後まで立派に戦い続ける。それが出来るのはこの私だけよ!ゴチャゴチャ言わないで、黙って見ているがいいわ!」
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『苦手な電話』
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トゥルルル…
シンジ「いけない、電話なってる。はい、もしもし?」
電話に出るものの、何を言ってるのか判らず困惑するシンジ。
シンジ「…何語?これ、アスカにかな…?アスカ、いる?ひょっとして家族なんじゃない?」
アスカ「居ないって言って。出たくないの」
シンジ「せっかくの電話なのに、どうしたんだよ、アスカ…」
アスカ「…後で、私からかけるからほっといて!」
シンジ「……」
何か様子がおかしいアスカに違和感を覚えるものの、その不機嫌さにシンジはそれ以上立ち入ることは出来なかった。
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『封じ込めた想い』
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アスカ「あ〜ぁ、なんか面白いの、やってないかな…」
ペンペン「クワ」
暇つぶしのためにテレビをつけ、ペンペンと一緒にバラエティ番組を見るアスカ。
『それじゃ次のお悩み、行きましょう。恋のお悩みのようですね。…えー、私は好きな人が2人居ます。どっちも好きで選べません』
アスカ「…バッカみたい。それって、どっちも好きじゃないんじゃない」
『どっちも選べないけど、2人には私の事を好きになって欲しいんです。どうすればいいんでしょうか?』
アスカ「だったら、とびっきりの美人にならない限り無理ね。そしたら嫌でも群がって来るわよ」
『まあ付き合ってみないと見えてこない事もあるから、2人とも友達として様子を見るとか…』
アスカ「それか男にとって、都合のいい女になることね。もっとも惨めな生き方よ」
いつもの調子で悪態を吐くアスカだが…。
アスカ「それにしても、どーしてこんないい加減なアドバイスするのよ」
ペンペン「グーワ?」
一転して項垂れ、元気がなくなるアスカ。
アスカ「パパだって、今のママのために変わってしまった。みんな、みんな変わってく」
アスカ「私は誰かのために生きるなんて絶対イヤ」
アスカ「好かれるために、自分自身を押し殺すなんて馬鹿げてる。一人で生きるほうがマシよ」
ペンペン「グワッ…」
いつになく沈んでいるアスカを見て一緒に落ち込んでしまうペンペン。
アスカ「アンタはさ、生きているだけで好かれてるんだから。心配しなくってもいいわよ」
『そういえば知ってる?独り言多い人は、寂しがりやなんだって』
ブツッ…
アスカ「ヤな気分、もう寝るわよ」
夜。
アスカ「ママ…。私の本当のママ…」
寝ながら母を思い出すアスカ。
幼いアスカ「ママ…、こっち向いて。私、選ばれたんだよ。人類を守るエリートパイロットに…。ママ!!ママ!!」
キョウコ(人形に向かって)「アスカちゃん。ママね、今日はあなたの大好物を作ったよ。ほら、好き嫌いしていると、あそこのお姉ちゃんに笑われますよ」
幼いアスカ「ママ、こっちを向いて。その人形は私じゃない。私はここよ!ママ…!!」
アスカ「ママ、何で死んじゃったの…?どうして…私を置いて…。ママ…」
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『空白の未来』
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教師「今日は、進路調査のプリントを渡します」
教師「各自、進路についてのプランを書いて提出するように」
アスカ「将来…、将来ねぇ…。もう大学出てるんだけどなぁ。白紙で出しちゃおうかしら」
ヒカリ「私は栄養士かな。アスカはどうするの?」
何故か俯くアスカ。
アスカ「そういえば私…、使徒を全部倒した後、どうすればいいんだろう」
ヒカリ「え…?」
意外な印象を受けるヒカリ。
アスカ「エヴァに乗らなくなった私を、誰も必要としなくなるのかな…」
ヒカリ「そんなことないわよ。アスカは頭もいいし、美人だし。私達より、色んな可能性を持っているじゃない」
裏のない笑顔で励ますヒカリだが、アスカは煮詰まった表情をする。
アスカ「でも、なりたいものなんて無いの。エヴァのパイロットじゃないと意味がないのよ」
ヒカリ「どうして…?私、アスカがパイロットでなくてもきっと友達になってるわ」
心からアスカを心配するヒカリだが、アスカは煮詰まったままである。
ヒカリ「そうそう、アスカだったら芸能界だって夢じゃないわよ。モデルとか」
アスカ「安っぽい大衆の為の商品なんかになりたかないわよ」
ヒカリ「なりたくてもなれない人だっているわよ…?」
アスカ「なりたくなくてもなる人だっているんじゃない?」
ああ言えばこう言うアスカに膨れっ面になるヒカリ。
ヒカリ「アスカ…。最近ちょっと偏屈じゃない?」
アスカ「そう…?」
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『居場所を求めて』
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アスカ「加持センパイ♪」
元気よく加持に声をかけるアスカ。
加持「アスカか。どうだ、調子は?」
アスカ「加持さんの為に絶好調よ♪」
加持「そうか。この調子で使徒を全滅させてもらわないとな」
アスカ「……」
アスカはそれを聞いて俯き、一転して悲しみの表情を浮かべる。
アスカ「加持さん…。使徒を倒してしまって、エヴァが必要じゃなくなったら、私は、どうなるの?」
加持「んー、そうなりゃ君は自由だ。好きなようにやればいい」
アスカ「加持さんは?」
加持「俺も判らんさ。その後もネルフがあるのか判らんし。適当に生きていくよ」
アスカ「もう、一緒に居られなくなるの…?」
真剣な表情の加持。
加持「多分な。君には、君の人生がある。俺には、俺の人生がある」
アスカ(私の居場所…、どこにもないんだ…)
非常に辛そうなアスカの表情。
加持「ま、将来何になりたいか、もう考え始めてもおかしくない歳だろ?アスカなら、何でもできるさ」
アスカ「…私、加持さんといたい。ずっと、一生。こんなに好きなのに」
困った顔をする加持。
加持「君が大人の目を持って俺を見たら…、印象が変わるさ。俺はそんなに立派な人間じゃない」
アスカ「そんな事ない、加持さん以外の男は考えられないわ!それともやっぱり…、ミサトのことが忘れられないの…?」
加持「そういうところが子供なんだ。表層的な事しか見えていない」
アスカ「私が大人になったら、考えてくれる?」
加持「その頃には、アスカの価値観が変わってるはずさ。きっと俺には見向きもしないだろう」
アスカ「……」
残念そうに項垂れてしまうアスカ。
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『自分の存在意義は?』
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夜、寝ているアスカ。
アスカ「ママ…。私はエヴァの為だけにいるの…?ママ…」
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『二律背反』
(アスカの心理)
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アスカ「私は独りで生きるの。独りでいいの、どうせ周りはバカばかり。付き合っていられないわ」
シンジ「じゃあ、何でいちいちつっかかって来るんだよ。独りじゃ生きられないからだろ?」
アスカ「うるさい!!この私が、本当はアンタなんかと付き合ったりはしないのよ!アンタに付き合ってやってるのよ!」
レイ「結局、独りにならないために、でしょ?自分をそうやって守りたいの」
アスカ「うるさい!!」
シンジ「そうしないと、自分自身が消えてしまうからだろ…」
アスカ「うるさい、うるさい、うるさい!!みんな嫌い、大嫌い…。でも、私…、嫌われたくない。独りに、なりたくない…」
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『せめぎ合う心』
〜A battle
against the self contradiction〜
(VSレリエル戦)
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『寂しいの?』
「誰…?」
『惣流・アスカ・ラングレー』
「それは私。私が惣流・アスカ・ラングレーよ」
『そうよ。あなたも、そう。惣流・アスカ・ラングレー』
『あなたの中のアスカ、みんなの中のアスカ、それが私』
『いつも心の奥底で泣いている…』
『いつも…、独りになる事を恐れている…』
『私は一人で生きるの』→『寂しくなんかない』→『逃げてなんかない』
「私は、独りで生きるの。ずっとそう決めてきたの。そんな弱音は吐かないわ」
『でも、誰かを思わずにはいられない。ママにしか呼びかけられない事を、寂しく思ってるんでしょう?』
「寂しくなんかない。みんなバカばかりだもの。一緒に居たくないバカばかり」
『他人を見下す事で、自分が優位だという救いの場が欲しいのよ。寂しいから、独りになったときの逃げ道が必要だったのよ』
「逃げてなんかないわよ!」
『その逃げた先から、いつか、自分の凄さを判ってくれると、人から求めてもらおうと。振り返りながら、誰かを待っているのよ』
『私は一人で生きるの』→『寂しくなんかない』→『私は選ばれた人間よ』
「私は、独りで生きるの。ずっとそう決めてきたの。そんな弱音は吐かないわ」
『でも、誰かを思わずにはいられない。ママにしか呼びかけられない事を、寂しく思ってるんでしょう?』
「寂しくなんかない。みんなバカばかりだもの。一緒に居たくないバカばかり!」
『他人を見下す事で、自分が優位だという救いの場が欲しいのよ。寂しいから、独りになったときの逃げ道が必要だったのよ』
「私は選ばれた人間なのよ!みんな私を大事にするわ。寂しくなんかない!」
『そうよ。みんなが必要としているのは、パイロットとしての私。私そのものには、誰も目を向けないわ』
『私は一人で生きるの』→『ママ以外、誰も要らない』→『私は人形じゃない』
「私は、独りで生きるの。ずっとそう決めてきたの。そんな弱音は吐かないわ」
『でも、誰かを思わずにはいられない。ママにしか呼びかけられない事を、寂しく思ってるんでしょう?』
「ママ以外、誰も要らない」
『ママだけを拠り所に、一生生きていくの?あなたを人形にしたママを?』
「私は人形じゃない!」
『人形としての生き方を選ばなかった代わりに、孤独を選んだのね』
『私は一人で生きるの』→『ママ以外、誰も要らない』→『ママは私を捨てたの?』
「私は、独りで生きるの。ずっとそう決めてきたの。そんな弱音は吐かないわ」
『でも、誰かを思わずにはいられない。ママにしか呼びかけられない事を、寂しく思ってるんでしょう?』
「ママ以外、誰も要らない」
『ママだけを拠り所に、一生生きていくの?あなたを人形にしたママを?』
「ママは、私を捨てたの?」
『ママは、自分の中の私を愛していたわ。それだけよ』
『一人が怖い』→『一人なのは自分のせい?』→『こんな事、望んでいない…』
「独りで居るのが怖いの!認められる為に、エリートになったのに!」
『ますます虚勢を張るだけしか出来なくなったのよね?』
「寂しいのは、私のせいだっていうの…?」
『あなたは人を遠ざけるために努力した。大学を出た、エヴァに乗った…。そう、全てあなたの努力の成果なのよ』
「私は認められたかっただけ…。こんなの望んでいなかった…」
『あなたが認めさせたかった相手は、もういないのよ』
『一人が怖い』→『一人なのは自分のせい?』→『これで構わない』
「独りで居るのが怖いの!認められる為に、エリートになったのに!」
『ますます虚勢を張るだけしか出来なくなったのよね?』
「寂しいのは、私のせいだっていうの…?」
『あなたは人を遠ざけるために努力した。大学を出た、エヴァに乗った…。そう、全てあなたの努力の成果なのよ』
「私はエリートよ。選ばれた人間は孤独な存在…。誰にも頼りたくないわ!」
『結局、その虚栄心が一番大事なのね…』
『一人が怖い』→『一人なのは他人のせい?』→『他人に頼らない』
「独りで居るのが怖いの!認められる為に、エリートになったのに!」
『ますます虚勢を張るだけしか出来なくなったのよね?』
「独りになるのは他人のせい?」
『あなたと、あなたの中の他人。他人はみんな、あなたの孤独に気がつけない』
「私はエリートよ。選ばれた人間は孤独な存在…。誰にも頼りたくないわ!」
『結局、その虚栄心が一番大事なのね…』
『一人が怖い』→『一人なのは他人のせい?』→『どうすればいいの?』
「独りで居るのが怖いの!認められる為に、エリートになったのに!」
『ますます虚勢を張るだけしか出来なくなったのよね?』
「独りになるのは他人のせい?」
『あなたと、あなたの中の他人。他人はみんな、あなたの孤独に気がつけない』
「イヤよ…、独りで苦しむのは嫌…。どうすれば他人に気が付いてもらえるの?」
『全てを捨ててしまえば、哀れんでもらえる…。でもあなたは何も手放したくないのでしょ?』
『誰も私を守ってくれないの』→『こんなに苦しんでいるのに』→『誰か近くに居て欲しい』
「誰も…、私を守ってくれないの?」
『遠ざけるから。自分も、他人も。だから、本音は誰にも届かない』
「こんなに苦しんでいるのに、気が付いてももらえないの?」
『あなたも他人の苦しみが届かない位置にいる』
「誰かに手を差し伸べて欲しい。誰かの手の届く位置にいたい…」
『エヴァを駆り、使徒を倒す…。そのために選ばれたあなたを、誰も近くになんか置かないわ』
『誰も私を守ってくれないの』→『こんなに苦しんでいるのに』→『他人は苦しんでいない』
「誰も…、私を守ってくれないの?」
『遠ざけるから。自分も、他人も。だから、本音は誰にも届かない』
「こんなに苦しんでいるのに、気が付いてももらえないの?」
『あなたも他人の苦しみが届かない位置にいる』
「私が苦しんでいるみたいに、他の人も苦しんでいるの?そんなはずないわ!」
『他人の苦しみを知りたくないから、距離を取ったのでしょう?知ってしまえば、優しくなってしまう、偉そうに出来なくなってしまう…』
『誰も私を守ってくれないの』→『他人って冷たい…』→『みんなも?』
「誰も…、私を守ってくれないの?」
『遠ざけるから。自分も、他人も。だから、本音は誰にも届かない』
「こんなに苦しんでいるのに…。他人って冷たいのね…」
『みんなその冷たさに耐えているのよ』
「みんなも?私だけじゃなかったの?」
『でもあなたは他の人と違う。選ばれた人なんでしょう?同じじゃないわね』
『誰も私を守ってくれないの』→『他人って冷たい…』→『私は他の人と違う』
「誰も…、私を守ってくれないの?」
『遠ざけるから。自分も、他人も。だから、本音は誰にも届かない』
「こんなに苦しんでいるのに…。他人って冷たいのね…」
『みんなその冷たさに耐えているのよ』
「私は違うわ…。だって私は他の人と違うんだもの…」
『孤独に凍えているあなたを知ったら、誰もそうは思わないでしょうね。やはり誰も近づけない方がいいわ』
「保温も酸素の循環も、もう限界なんだ…。寒いよ…」
「ママ…」
『アスカ…。アスカちゃん…』
「ママ?」
『アスカちゃん…』
「ママ…、ママぁ…。どこに行ってたの?ママ、もう行かないで、傍に居て!ママ…」
『一緒よ、ずっと…。でも、それでいいのね?』
「ママ…?」
『あなたを待っている人がいるわ』
「ママ…」
『あなたはまだ生きるのよ、アスカ。さあ、行きましょう』
オオオオオオオオォォォォォォォォ!!!
咆哮をあげ、レリエルを引き裂くエヴァ弐号機。
レリエル、殲滅。
「ママ…。ママ…?」
(ママに会ったような気がする。柔らかくて暖かいママの腕の中)
(知らないのに。抱きしめられた事なんて、一度もないのに)
(確かに残るママの腕の感触)
「エヴァの中で…、あの時、ママが助けてくれた気がする」
「ママが見ていたような気がする…」
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『お役目御免…?』
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アスカ「使徒も全部倒して、私の役目…、終わったのね。これからどうすればいいんだろう…。ママ…」
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『見方を変えれば…』
−アスカ、心の補完−
(VS量産機、勝利エンディング)
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女の子の泣き声、子供の頃のアスカだ。
アスカ「泣いてる…。泣いてるのは私だわ。私の願い…」
−何を願う?−
アスカ「私が願うのは…」
再び泣いている子供時代を振り返る。
アスカ「泣いては駄目。独りで生きなきゃいけないの。大人になるの」
大人…?今の私は大人?
…マンション。
アスカ「お帰り」
加持「待たずに寝てりゃよかったのに」
夜遅くまで帰りを待っていたと言うのにそっけない言葉。
アスカ「どうしてそんな事言うの…?」
加持「大袈裟にがっかりしたりして何だよ…。…何?何を俺にして欲しかったんだ?」
アスカ「…別に」
うざったげに応じる男にしょぼくれてしまう。
アスカ「…大人になっても、寂しいのは変わらないんだ。受け入れてもらえるわけじゃないんだ。やっぱり、独りなんだ」
ミサト「自分自身が変わろうとしないからよ」
シンジ「ヘンなところばかり大人になって」
レイ「自分に制限を与えて、外へ踏み出せないのね。外の世界の可能性に触れたがらない」
キョウコ「アスカちゃん、あなたの好きにしていいのよ?」
アスカ「ママ…?」
キョウコ「あなたが願うこと。どうありたいかは自分で決めるのよ」
レイ「そこから踏み出さなければ、何も変わらないわ」
真っ白な空間。
アスカ「……。でも、ここはどこなの?何もない、誰もいない」
−そこは自由−
アスカ「こんなものが自由なの?」
ミサト「全てはあなたの思うまま」
リツコ「それが補完計画」
レイ「あなたが踏み出す、あなただけの真実」
−何を願う?−
学校。
教師「今日は、進路調査のプリントを渡します。各自、進路についてのプランを書いて提出するように」
ヒカリ「私は栄養士かな。アスカはどうするの?」
アスカ「判らない」
ヒカリ「え…?」
俯くアスカに驚くヒカリ。
アスカ「どんな自分になりたいのか、判らないの」
ヒカリ「そんな事ないわよ。アスカは頭もいいし、美人だし。私達より、色んな可能性を持ってるじゃない」
アスカ「そうかなぁ…」
まだ心配げな表情を隠せない。
ヒカリ「そうそう、アスカだったら芸能界だって夢じゃないわよ。モデルとか」
アスカ「んー、それもいいな。そういえば、他にもやってみたいことって…、あるかな?」
ヒカリ「何でもいいと思うわ。好きな事なら。なりたいものがあるのなら」
再び内面へ。
「そっか…。私は自由なんだ。ただ、私は何も選んでこなかっただけなんだわ」
どうして自分を嫌うことばかり考えていたのだろう。
私が私を大事にしてあげればいい。自分をもっと好きになれば、私は変わる。
私はそれを知っている…。
青い空、青い海、みんなの拍手喝采
シンジ「おめでとう」
レイ「おめでとう」
ミサト「おめでとう」
ゲンドウ「おめでとう」
冬月「おめでとう」
リツコ「おめでとう」
マヤ「おめでとう」
日向「おめでとう」
青葉「おめでとう」
加持「おめでとう」
ヒカリ「おめでとう」
トウジ「おめでとう」
ケンスケ「おめでとう」
カヲル「おめでとう」
ペンペン「クワァ〜、クワァ〜、クァクァクァ!」
アスカ「ありがとう、みんな。ありがとう、私」
「ありがとう…。約束するわ。私、きっと幸せになる」
「あなたに、ありがとう…」
『完』
−解説−
(本編を交えたアスカの心理について)
PSP版エヴァ2のアスカシナリオ、「脆いところへくちづけを」を元に、惣流・アスカ・ラングレーの心理描写をお送りしました。ゲームをやらない方もいらっしゃるだろうし、本編に準拠した心理描写の解釈にお役に立てればと思い、投稿させていただきました。イベント名はその内容に合うと思う題名を、私なりに考えたものです。また、会話だけでは捉えにくいキャラクターの心情を鮮明にするために、背景描写やキャラクターの表情の変化を追加し、一部言葉の使い方が「あれ?」と思うようなところがあったりしたので、これに私なりの修正を加えております。ご了承ください。
1.誰にも言えない想い
さて、本題に入りますが、本編アニメでもキャラクターとしてのドラマ性が非常に豊富なアスカ、PSP版エヴァ2ではその心理に更に踏み込んだ形をとっています。ただ、どうにも母のことを気にしすぎてるところがあるのと、本編アニメでは克明に描かれたシンジとの関係が省かれているので、マザコン性が強調されすぎな感じがするのが不自然かもしれませんが。
『自分を突き動かすもの』のアスカは、「ありのままの自分を人に認めてもらうことが自分の存在意義である」と、自分に言い聞かせており、我武者羅に努力し続けることこそ「ありのままの自分を人に認めてもらえることに繋がる」と、そう純粋に信じて必死に自分を奮い立たせようとしています。何故、彼女はそんなにも自分の存在を誇張し、人に認めてもらおうとするのか。それは幼少期、母を始めとして誰にも相手にしてもらえなかったことに起因しています。『苦手な電話』及び『封じ込めた想い』を見ても判るでしょう。本編とは時期的に、あるいは展開的に少し違うところがありますが、まず『苦手な電話』では、アスカと継母の関係が、鮮明に表れています。第弐拾弐話『せめて人間らしく』の、上っ面だけの関係である、と言うアスカの、継母に対して苦手意識を持っており、本当は出たくないという本音が明らかにされています。
次に、『封じ込めた想い』では、とあるバラエティ番組を見ていたアスカが、ペンペン以外誰もいないところで、自分の心の奥に秘めていた想いを吐露します。アスカはその継母に苦手意識を持っている、その理由は恐らく、その継母が、実母であるキョウコから父を奪ったことが、キョウコが壊れた遠因でもあることも含まれているでしょう。難しいところですが、本編において、アスカの父の浮気相手、それはスクリプトやクレジットに「女医」と表記があり、「毎日あの調子ですわ」などの台詞の内容からも、キョウコの担当医である可能性が高いでしょう。
キョウコ――――アスカの父――――キョウコの担当医
(夫婦) (浮気・再婚相手)
|
アスカ
またアスカはその生々しい浮気現場を目撃しているようです。その際に発せられた言葉も、当時から物分かりのよかったと思われるアスカには理解できていたのかもしれません。ともかく実母であるキョウコから父を奪った存在、として、当然の事ながらアスカにはその継母となる女性に対して隔絶した壁のような物があったと思われます。それがあってか、キョウコが死んでその浮気相手、すなわち継母となった女性にも、その壁を認識されて、「張り詰めた絶対的な拒絶があるあの子が苦手である」とアスカの父に告げられています。アスカの父はアスカの父親であることをやめられないが、自分はいつでもアスカの母をやめることが出来る、とも。それをアスカは聞いてしまっているのです。それでは見捨てられるのと同義です。
今の父を占有している継母の意向一つで自分は見捨てられてしまう…。その言葉は幼いアスカにとって、恐怖でしかなかったでしょう。ついでに言ってしまえば、父親が今の母親のために変わってしまったと言うのはそのことも含まれていると思われます。だから自分が生きるには「継母に好かれるいい子」を演じ続けなければならなかったのです。まるで赤の他人も同然の家族と言う環境において、このようなことを強いられることは、幼い子供にとっては相当なストレスになると思われます。
人の為に、人に好かれるために自分を押し殺すことなど馬鹿馬鹿しい、そんなのは惨めな生き方である、独りで生きたほうがマシだ、と番組に毒吐いたり愚痴をこぼしているのは、かつて自分がそのように生きてきたことをそのまま言い表していることにもなります。
また、これは裏を返せば、ありのままの自分を受け入れ、認めてくれるのでなければ嫌であるという気持ちの表れにも繋がります。しかし、その「ありのままの自分」とは、一体なんなのでしょう?
2.パイロットであることに固執し、他の可能性を見出そうとしないアスカ
これについて切り込んでいるのが『空白の未来』と『居場所を求めて』です。『空白の未来』は学校で配られた進路調査について話すアスカとヒカリ、『居場所を求めて』は憧れの男性である加持と、使徒を全て倒した後どうなるのかについて話す展開です。
『空白の未来』は、見ても判りますが、将来についてある程度考えているヒカリと、それが思いつかないアスカと言う、2人の明確な違いが描かれています。普段は自信満々で、強気な姿勢を崩さないアスカが、将来については不安を抱えているということに驚きを隠せないヒカリですが、そこは親友というか数少ない理解者というか、落ち込むアスカを心配して、自分たちよりも様々な可能性があるではないかと励まします。しかしアスカは何故か「エヴァのパイロット」でなければ意味が無く、他になりたいものなどない、考えられないと、半ば意地を張るかのように他の可能性を否定し、エヴァのパイロットであることに固執します。
この思考は『居場所を求めて』のやり取りにも繋がります。ネルフ施設で加持に出くわしたアスカは、お決まりのパターンで加持に構ってもらうために、元気よくじゃれつこうとしますが、「その調子で使徒を全滅させてくれ」という加持に、一転して悲しみの表情を浮かべてしまいます。使徒を全て倒した後の自分はどうすればいいのか。その居場所を加持に求めるアスカですが、加持には加持の事情があり、彼はつれない態度を通し、アスカの主張を受け付けません。これらが示していることは何なのか?それはアスカが自分の居場所、自分の存在価値を「エヴァのパイロットであること」でしか見出せない、そうでなければ相手にしてもらえなくなる、そう思い込んでしまっている、と捉えることが出来るでしょう。ついでに言えば、これは第六話『決戦、第3新東京市』におけるシンジとレイのやり取りの中で、レイの口から発せられた『絆』と言う言葉、すなわち人との繋がりをエヴァに乗ることでしか見出せていない彼女とほぼ同類だったと見なすことも出来ます。
3.錯綜する存在意義と虚栄心、その自己矛盾に対する苦悩
では、このままずっとエヴァに乗り、永遠に使徒と戦い続けることが、彼女の願望なのかというと、決してそういうわけではないということを仄めかせる描写があります。『自分の存在意義は?』です。非常に短いですが、「自分の存在意義はエヴァに乗るためだけにあるのか」と問うこの言葉に込められた意味は絶大です。エヴァに乗ることでしか自分の存在意義を見出せない、かと言って自分の根本を成すものが、そんな自分しかないことに虚しさを感じているという思いが、彼女の心の中に内在しているのです。しかも、本編では暴走したエヴァを目の当たりして、その恐ろしさについて、アスカは少なからず震えています。
しかしアスカには、エヴァに乗れる事、自分が選ばれた数少ないパイロットである事から、自分はエリートであるという自尊心があります。この自尊心からくる誇りとプライドが、彼女の心理に複雑に絡んできます。このことが『二律背反』と『せめぎ合う心』に鮮明に表れております。
PSP版エヴァ2では全てのパイロットキャラ(シンジ、アスカ、レイ、トウジ、カヲル)に、レリエルに取り込まれてしまうイベントが用意されています。特にアスカの場合、これはある意味シンジのそれより熾烈を極めています。『せめぎ合う心』には、〜A battle
against the self contradiction〜などと勝手にサブタイトルを付けましたが、これはレリエル戦での展開が、本編で飲み込まれてしまったシンジと同様、「影の自分」(すなわち自分自身そのもの)とのやり取りであることから、そうつけました。このやり取りを見ても判ると思いますが、まさしく「自己矛盾との戦い」です。
最終的に本編の初号機と同様、どのエヴァでも引き裂いて虚数空間から脱出するこの展開は、「if」の要素を超えることはありませんし、基本的に設定などから、本編では有り得ないことだと思われますが、その心理描写に関してだけは本編のものとなんら支障をきたさないでしょう。緑色の字は自分とのやり取りの上で生じる分岐、赤色の字は「影の自分」です。目の前に現れた「影の自分」。自分の全てを知っている自分そのものとの対峙。分岐によって返ってくる「影の自分」の反応は違いますが、基本的にどれも全てがアスカを構成する深層心理です。
アスカの場合、「影の自分」に強く反発してそれを否定しようとするか、心細さそうに「影の自分」に問いかける要素が強いです。しかし「影の自分」も自分自身であるので、自己矛盾に終止符を打つことはできず、「影の自分」を否定することもできません。「影の自分」は、まるで針で突くかのように的確に刺激し、その深層心理に突っ込んできます。
総合すると、このやり取りは、本当のアスカが、素行や振る舞いとは対照的に、本当は誰よりも繊細で、人恋しさは人一倍であり、他者からの愛情を渇望している、脆弱な心の持ち主であるということを強く表しているのです。過去においては辛い現実と向き合わなければならず、その現実から逃げ出すことすら出来なかったアスカは、「独りで生きる」事を余儀なくされ、プライドと言う名の「強さ」という殻、それすなわち「虚栄心」を纏わざるを得ず、選択する余地の無い人生を強いられることになってしまったのです。いつも強気で、エリート意識を持ち、他人を見下すかのような態度をとるのは、その心の奥にある不安と自信の無さを隠す為であり、その実、そうすることで自分が人よりも優れていることを示し、人よりも優位の立場にいると言う「救いの場」を求めて逃げていたことになります。
けれども、この「虚栄心」を守ることに必死になり、その「救いの場」を維持し続けようとしたために、ありのままの自分を人に受け入れてもらいたいという、根底にある本来の想いを満たせなくなってしまいます。他人を遠ざけ、自分も他人の苦しみから目を背けるために遠ざかってしまったからです。「ありのままの自分を人に認めてもらう」ために、エヴァに乗り、大学を出るまでして努力したことは、その上で纏った自尊心から来るプライドと言う「救いの場」に逃げてしまったことで、他人を遠ざけることに一役買うことになってしまい、望んでいなかった結果をもたらしてしまいました。『私は認められたかっただけ…。こんなの望んでいなかった』という彼女の言葉からも判るでしょう。それまでの彼女を取り巻く環境によって構築されてきた強迫的な精神に基づいて我武者羅に突き進んできたアスカには、もう後戻りは出来ないと思い込んでいたのかもしれません。
誰かに自分の想いを判って欲しい、ありのままの自分を受け入れて欲しい、傍に居て構って欲しいという、アスカの根底にある愛情を渇望する心。アスカの中では、「ありのままの自分を認めて欲しい」という本来の想いが暴走し、自分を守るための殻である「虚栄心」と、複雑な心理が錯綜して混乱状態にあり、何が本当に自分にとって大事だったのか、必要だったのか、それが自分でも判らなくなっていたのでしょう。だからその「虚栄心」の赴くままに暴走を続けてしまうほかなくなっていたのだと思われます。アスカの言う、本当に知って欲しい「ありのままの自分」とは、孤独に凍えて震えている、その苦しみに喘いでいる自分の心です。
『二律背反』は、主にレリエル戦後に発動する展開ですが、内容的に『せめぎ合う心』の延長と捉えることが出来ると思います。私的にこの二つの心理描写の根底にはもう一つの要素があると考えております。それは、「虚栄心」の塊である自分が嫌いだから、他人に嫌われてしまうことを恐れていると言うことです。これをアニメ本編の第弐拾四話『最後のシ者』のカヲル風に言ってみれば、「常に人間は心に痛みを感じている。心が痛がりだから、生きるのも辛いと感じる。自分が嫌いだから、強がって人を傷つけることで、その痛みを誤魔化そうとして、余計に心に痛みを増して、耐え切れなくなってしまう」でしょう。人から嫌われることを恐れるが故に、自分から嫌おうとすることで、その嫌った人間から嫌われても何とも想わないようにする…、なんとも悲壮感漂う考え方です。そして、これらの複雑な自己矛盾と苦悩は、本編(主に後半や劇場版)において、愛憎半ばする感情と言う形で、たまたま彼女の近くに居た、同じパイロットという競うべき対象としてのライバルであり、共に生活する同居人(或いは友人)でもあり、また尚かつ異性でもあるシンジに対して激しくぶつけられていくことになるのですが、それについてはまた別の項に譲ることにします。
4.アスカ、真の新生
PSP版エヴァ2では、本編のTVエンディングのシンジの補完同様に、VS量産機戦に勝利することが条件ですが、アスカの心が補完されていく模様が描かれています。ここでは今まで述べてきた心理描写に関する説明の総合的な結論とでも言うべきものが提示されております。
まず最初に描かれるのは、背景にマンションだけを写した、アスカと加持の会話です。『居場所を求めて』におけるアスカの主張が、もしその望み通りになったとして、そのまま現実になったとしたらどうなるのか、についての指摘、突っ込みでしょう。加持と一緒に居たいと願っていたアスカ、しかしその加持との生活は、寂しいことには変わりがありませんでした。このぶっきらぼうで、まるで相手をするのがめんどくさげな加持の、アスカに対するぞんざいな扱い方は、本編でもほとんど相手にしていなかったという、その延長線にあるでしょう。「ありのままの自分」を見てもらえるわけではない、受け入れてもらえるわけではない。好きだと思っていた加持は、彼自身が指摘していたとおり、アスカには表層的なことしか見えておらず、好きだと言う気がしていただけであり、自分が主張していたことがそのまま現実になったとしても何の解決にもならないと、アスカは一旦失望します。そしてその後、ミサト、シンジ、レイにそれが何故なのか指摘されます。自分自身が変わろうとせず、虚栄心ばかりを張って他人を遠ざけ他人の心を受け入れようとはせず、ただ自分の存在を自己主張するだけで、他の可能性に目を背け、自分に制限を加えて外に踏み出そうとしないからだと。
「自分の望むこと、自分がどうありたいかは自分で決めればいい」と言う母・キョウコ。「外に踏み出さなければ何も変わらない」と言うレイ。指摘する側の面々全員が、自分のことを棚に上げており、「他人のこと言えるのか?」と(特にレイやミサトなどには)疑問符が浮かびますが、その指摘は間違ってはいないでしょう。本編でもそうですが、誰もがみな他人のことを言える立場にないので、だからこそ当人たちにとっても、あるいは傍観している我々にとっても神経を逆撫でるような印象が残るわけです。それが『エヴァっぽさ』を飾る一つの要素とでも言うべきものだと言われれば、その通りだと言うしかなさそうですが。
次に描かれるのは『空白の未来』が、「虚栄心」による邪魔が入らない、アスカの本音がストレートに表現された描写に変わっているものです。ここでは自分がなりたいものが何なのか判らないことに、ヒカリが助言する形になり、大きく違うのは、『空白の未来』のように自分のなりうる他の可能性について偏屈に否定せず、「そういうのも悪くない」と前向きに考えてみようとしていることです。好きなことがあるのなら、なりたいものがあるのなら、自分の思う通りにやってみればいい、と言うヒカリに、アスカは、自分はただ、「当たり前のことに気づいていなかっただけだった」という事に気づきます。
選択する余地の無い人生を送ってきたなら、これから選択していけばいい。「虚栄心」で自分を守るのではなく、ありのままの自分をさらけ出して、本当の意味で自分を大事にすればいい。自分が嫌いなら自分を好きになれるように変えていけばいい。そうすれば周囲に対する見方も変わってくるし、周囲の自分に対する印象も変わってくる。これまでの自分を思い返し、自己分析して、これからの自分を考えると言うこと。今まで自分のやってきたことが無駄になるというわけではない。後戻りできないと思い詰めるのではなく、むしろそれをこれから生かしていけばいい。それが自分にはできるはずだと結論付けることができたのです。そしてあえて付け加えて言えば、ヒカリとのやり取りが表すように、困ったのなら一人で悩まず人に相談してみればいい。そうすることで得られるものもある、と言うことにも気づいたのです。これは詰まる所、TV版エンディングのシンジとほぼ同じ結論に行き着いたことになります。そしてその瞬間、アスカの周りにあった壁は崩れ落ち、彼女の心の補完は完了しました。
(旧)劇場版のアスカの復活劇が、「死」という絶対的恐怖に直面したことでの『退行への緊急回避』による『偽りの再生』と題されるのであるなら、こちらは自分と向き合い、人から指摘を受けてそれを受け入れ、よく考えて自分なりの答えを導き出しているので『真(まこと)の新生』を果たしたと言えるでしょう。ただ、ストーリーの展開上、劇場版とほぼ同様の補完計画が発動しているので、その後人類がどうなったかについては描写が無く、不明です。
余談ではありますが、安野モヨコ著『監督不行届』における庵野監督のインタビューによると、監督は常に、見た者が内に篭るのではなく、外に出て活動したくなるような作品を作りたいと思っていたようで、自分が『エヴァ』で最後まで描くことが出来なかったことを、奥さん(安野モヨコさん)が描いているのを見て衝撃を受けたそうです。エヴァ2のこのようなエンディングには、何か場当たり的なものがあり、庵野監督が全てにおいて編集したかどうか疑問がありますが、そのような監督の理想像のようなものが見え隠れしていると思われます。
後編に続く(執筆中)